今回、収集品の中から紹介するのは「仕込み大鎖鎌」です。

 

 

 

全長:1m63㎝(鎖分銅は除く) 重量:1.650㎏ 棒身(柄)は樫の木製

鎖分銅長:1m7㎝

    

【鎌を出した状態】                      【鎌を収納した状態】

 

私が初めてこの鎖鎌の存在を知ったのは、当時愛読していた雑誌「秘伝古流武術」の1995年11月号でした。

 

岩井作夫先生が秘武器の世界という論考の中で鎖鎌を紹介されていて、その中にこの仕込み大鎖鎌の画像と説明が載っていました。

 

これまで見た事のない異風な造りのもので驚いた記憶があります。

 

鎌刃収納時は鎖棒として用い、鎌刃を出して鎖鎌に変化するという機巧的な武器です。

 

 

 

刃長:23㎝ 刃幅:2.5㎝ 刃厚:4.5㎜

 

鎌刃は平造りで焼き入れはされているようです。

 

鍛造跡は見られますが鍛え肌や刃紋は確認できません。

 

 

 

 

鎌刃は柄に掘られた溝に収納されます。

 

この溝は槍の中心仕立と同じで柄の強度を上げるため片側からのみ掘られています。

 

鎌刃元と胴輪には鎌を固定するため幅4㎜、深さ4㎜の噛み合う溝があります。

 

 

 

鎌刃は収納時も振出し時も胴輪を目釘孔まで動かして孔を合わせ、鉄目釘を差し込み固定します。

 

固定用の鉄目釘は胴輪に溶接された鉄輪に通した紐で縛ってあります。

 

鎌刃収納時は上の画像のように開閉部を下向きにすると若干の遊びがあるので少しだけ鎌刃が覗いたりはしますが...。

 

頭金具寸法 縦:42㎜ 横:30㎜ 高さ:24㎜

胴輪寸法 縦:48㎜ 横:35㎜ 高さ:20㎜ 目釘穴径5.5㎜(貫通)

両金具とも鍛鉄製

 

頭金具は二重構造になっていて内側の鉄筒を嵌めた上にもう1つの鉄筒を被せて、両側2本ずつ鉄釘で固定しています。

 

外側の鉄筒には幅5㎜のスリットがあり、そこから内側の鉄筒に取付けられた鎖分銅取付環(回転しない)が出ています。

 

なぜこんな手の込んだ造りにしたのかは分かりません。

 

石突はこのような変わった形です。(鉄製)

 

 

 

 

今回紹介した鎖鎌は残念ながら骨董的な価値はありません。

 

理由は

 

①鎖分銅が違う。

 岩井作夫先生所蔵のものは鎖が沸かし付けではなく8の字を中央から90度ひねったもので分銅形状も異なる。

 紹介のものは平成時代に復刻版の古武器が製作された現代作のもの(結構出回っている)

 

②胴輪の紐付環と鉄目釘の紐付環部および石突の角が溶接されている。

 

からです。

 

ただし持ったバランスはとても良く、柄の削り方や頭金具の出来もとても素晴らしいです。

 

おそらくですが、鎖分銅を除いた本体の方は昭和初期に流儀に伝わるこの秘武器の現物を元にして師範もしくは門人が復元製作させたもの、もしくは壊れていた現物を溶接で修理したものではないでしょうか。

 

高価売買目的の為に製作されたものではないと思われます。

 

 

本来このブログでは部品の諸元等をできるだけ詳細に公開する趣旨なのですが、悪意のある粗悪なものが今後量産されぬようにあえて大事な部分の説明は簡略表記しました。

 

 

この鎖鎌は四国地方に伝わったものでは?との情報があります。

 

何方か詳しい情報をお持ちの方がおられれば、ご教示下さい。