今回は槍穂の紹介ではなく、柄の仕様について書かせて頂きたいと思います。
収集している槍の中には柄が無残にも折れていたり、ひび割れがあるものもあります。
そのまま保存するのも大事な事だとは思いますが、以下の画像の槍ではそのままの状態での保存が難しいと判断したので研究のために切断しました。
本来は9尺柄の槍を逆輪のところで切断しています。
分解するとこんな感じです。
画像①上段左から 口金 逆輪 柄の残欠
画像②左から 逆輪 柄の残欠 口金 を上から見たものです。
口金は槍穂のケラ首の形状にぴったり合うように丸や四角・六角の形状になっていて、穂先に加わる力を受け止める金具で素材は銅や鍛鉄製です。
またケラ首元の茎の形状に合わせて単なる筒状ではなく画像②の様に四角に作られているものもあります。
槍の柄は画像③のように茎を差し込む溝を片側から掘っています。
はじめは「畔引き鋸」を使用して切れ込みを入れた後、鑿で掘り進めたり微調整したのではと考えていました。
ところが溝には鋸使用後に見られる跡が残っていません。
たぶん「さくり鉋」の様な鉋で溝を掘った後、鑿で掘り進めたり微調整したのだと思います。
この槍の柄は強度を高めるため、口金を嵌める部分だけは茎の形状に合わせて掘り込みで穴を開けています。
他の槍の柄では口金を嵌める部分まで片側から溝を掘ったものもあります。
溝を掘ったあと埋め木をして棒としての強度を保ち、更に籐や鮫皮、紐等を巻いて補強しています。
埋め木も工夫されていて、左の様な縁を付けて溝に深く入り込まないようにしてあります。
埋め木を嵌めるとこんな感じです。
柄の目(木の繊維方向)と埋め木の目が合わせて作られているのが分かると思います。
槍穂と金具類を取り付けるとこんな感じになります。
逆輪も柄の補強のための金具ですが、この逆輪は銅製で猪目🩶の穴が2箇所開けられています。
これは目釘穴があるのためで補強と装飾を兼ねています。
目釘を入れた後この逆輪を回すと「廻り胴輪」と同じ効果で目釘が抜けなくなります。
槍の柄は本当によく考えられて製作されていると思います。
先人の知恵は本当に素晴らしいです。