自分の字にコンプレックスのある私は美しい字というものに強い憧れがあります。
中でも草書体で書かれたものには特に勢いが感じられて感動します。
刀剣の中には筆やペンで書くのも難しいのに、鏨で流暢な銘を草書体で切っているものが結構残されています。
いつの日か草書体で銘が切られた刀剣を入手したいと常々思っていましたが、ついに入手することができました。
それが今回、紹介する「銘が草書体で切られた槍 」です。
この槍には白鞘以外の柄(拵)はありません。
全長:38.3㎝ 重量:170g
形状は正三角槍です。
3面に棒樋が彫られています。
この槍は前の所有者が研磨に出されたようですが、地肌は柾目肌という事が辛うじて分かる程度です。
刃紋の方は一見すると直刃に見えますが刃取りが酷くて匂口などは分かりません。
刃長:11.8㎝ 先幅:1.4㎝ 元幅:1.8㎝ 先重ね:1.2㎝ 元重ね:1.6㎝ ケラ首形状:丸
さて、本題の銘ですが
表「羽陰住貞弘造之」
裏「文化五年ハ月日 郷士左源太平院以拍所」
と流暢な鏨使いで切られています。
槍本体ではなくて、この銘欲しさに購入したようなものです。
作者の「貞弘」はれば羽陰(現在の秋田県)の刀匠で新々刀期に活躍しました。
かの巨匠「水心子正秀」の門人です。
以上、清水澄 氏の著書「刀匠全集 新刀編」から引用しました。
疑問?なのはこの一文です!!
「郷士左源太平院以拍所」
刀剣登録審査員の方々はよく判読されたな!と思いました。
私には無理です。
これはどんな意味なのでしょうか?
個人的に調べてみましたが、手がかりさえ掴めません。
もし、この意味が分かる歴史とかに詳しい方がおられれば是非ご教示頂きたいと思います。