今回は番外編として収集品ではなく自作の斬り柄を紹介します。

 

斬り柄とは江戸期において罪人の死体を斬る事で刀の切れ味を試す際に使用した専用の刀の柄です。

首斬り浅右衛門こと山田浅右衛門やその門下で使用されました。

 

私が初めて斬り柄の存在を知ったのが名和弓雄氏の著書「絵でみる時代考証百科 日本刀・火縄銃・忍びの道具編」で80~82ページに記載されています。

斬り柄製作にあたってはこれを参考にしました。

 

現在では畳表や竹などを斬って切れ味を試しますが、通常の柄では斬っているうちにガタツキが生じます。

 

それでこの斬り柄ならば通常の柄より丈夫なのでは?と考えました。

 

 

下の画像で(上)と(下)は脇差用、(中)は刀用です。

 

全長:(上)23㎝ (中)30.5㎝ (下)37.3㎝ 幅(共通):3㎝~3.8㎝ 白樫製

 

通常の柄と同じく刀の茎に合わせて2枚の板を掘り込んで製作します。

白樫は固いので苦労しました。

 

(上)は一番最初に作ったものです。

柄木を合わせる時に片方に刺さっている鉄釘をもう片方の穴に差し込めば上下にズレが生じない造りです。

 

(中)と(下)は山田流の規定通り柄木を鉄釘でカシメ止めして扇子のように開けるようになっています。

 

鉄環は鍛造で製作したかったので鍛冶屋さんに依頼しました。

 

ナットを鍛造して製作されたとの事です。

 

柄に嵌めた時の調整と表面磨きは自分で行いました。

画像左から大・中・小です。 高さ1.1㎝(共通) 鍛鉄製

 

柄尻から胴輪小を入れるのに鉄釘の頭が出ていては邪魔になります。

そこで(中)と(下)は以下の画像のように両側とも焼き込んで柄の表面から鉄釘の頭が出ないように工夫しました。

 

(上)は無反りです。 重量:170g

 

(中)刀身の反りに合わせて中央から反りをつけていて、斬撃力を高めるため「たなご腹」の様な形状にしています。

表面が赤いのは柿渋を多く塗ったからです。 重量:220g

 

(下)中央まで無反りでその先からは柄尻に向かって反りをつけています。 重量:240g

 

山田流では刀身だけ斬り柄に差し込むのですが私はハバキも鐔も切羽も付ける仕様にしました。

 

 

刀身は脇差で刃長:48㎝

 

刀身は刀で刃長:64.7㎝

 

刀身は脇差で刃長:48㎝

 

3本とも想像以上にバランスも良く斬りやすいです。

朴の木に比べ白樫は固いですが、使用後も茎に傷やヒケ等は付きませんでした。