今回、収集品の中から紹介するのは「稽古槍」です。
稽古槍は別名「タンポ槍」とも呼ばれます。
これは安全のため槍穂の部分に「タンポ」が付けられているからです。
紹介する稽古槍は樫の木製の柄に鍛鉄製の鍵が付いているので、おそらく鍵槍の流派のものと思われます。
この稽古槍は#9 紹介した骨董屋で見つけて購入しました。
お店の一角に棚があってその中に槍や薙刀・武器ではない棒や煤竹等が無造作に置いてあり、その中から苦労して探し出しました!!
ほとんど曲がりや反り・虫食いもなく良い状態です。
全長:2m83㎝ 重量:1.4kg 柄の径:1.7㎝~3㎝ 長いので撮影も大変です。
穂先部分のタンポ先から41㎝の所に鍵が付けられています。
穂先タンポ最大径:3.7㎝ 長さ:2.7㎝ 皮製
やや小さく感じるのは経年変化で皮が縮んだためではないでしょうか。
タンポは鍵の両端にも付けられていたようですが、片方のものは欠損しています。
鍵のタンポは以下の画像のように2つの部品から出来ていて
左のもの(A)は鍵先端に皮の塊を置き、それを長方形の皮を二つ折りにして包み麻糸で巻いて固定していたものです。
右のもの(B)は皮で球状の巾着袋を作り中に綿を詰めたものです。
(A)に(B)を被せ紐を強く絞った後、余った紐を巻き付けて固定しています。
鍵も流派により色々な形状がありますが、この稽古槍の鍵は片方が直角に曲がり、もう片方は緩やかに上に向かって反っていて槍印等を付ける環も付いています。
鍵幅:18.6㎝ 鍵の立ち上がり長さ:6.5㎝
鍵の上の面には滑り止めの為の溝(雁木)が付けられています。
鍵表面には朱漆の下地の上に黒漆が塗られていたようです。
柄の後方には握っただけで鍵の向きが分かる「さぐり」の様な削りは見受けられませんが、鉋で均等に丸棒を削り出したであろう跡が手触りで十分感じられます。
柄そのものに打ち込み傷や凹みがない事から、この稽古槍は形や素突き等だけに使用されたのではないでしょうか。