昨日、横浜での夏期講習の帰りに

久しぶりにディスクユニオンに寄って

クラシックの棚をあさっていたら

こんなCDが目にとまりました。

 

イリバレン編曲版《スターバト・マーテル》

(ベルギー Passacaille

 PAS-1094、2021.7.17)

 

ジャケ裏を見ると

フアン・フランシス・デ・イリバレン・エチェバリア

Juan Francés de Iribarren Echevarría による

マラガ大聖堂バージョンとあって

なんだか怪しげではありましたが

ペルゴレージの楽曲を収録しているのは

間違いないだろうというわけで

購入してきて聴いてみました。

 

そうすると

確かに聴き慣れたバージョンとは

微妙に異なっていて

それが微妙な変更なだけに

変える必然性はあったのか

と思わされたりもしたり。

 

 

タワーレコード・オンラインの

商品情報のページを見ると

マラガ大聖堂に残っている

5冊の《スターバト・マーテル》をもとに

イリバレンの改訂版を再構築した

というふうに書かれています。

 

いや、再構築したと

書かれてはいませんけど

ライナーによれば

イリバレンのバージョンは

器楽パートしか残っていなかったらしく

声楽パートを再構築した

と書かれてあるので。

 

その再構築のために

後世の人間によって書き込まれた指示を

参考にしつつも

慎重に排除していったようです。

 

 

ところで

スペインはアンダルシアの

マラガ大聖堂版というだけなら

編曲者もあまり有名でないだけに

ことさらに取り上げる必要もないか

と思っていたんですけど

併録されている

イリバレンの聖歌を続けて聴いたら

なんとびっくり

《スターバト・マーテル》の旋律

そのままだったのでした。

 

具体的にいえば

トラック14の Ave Maria

トラック19の

Lamentación 2a del Viernes Santo

(聖金曜日のための2声の哀歌)は

イリバレンのオリジナルのようでしたが

残りのトラックはすべて

ペルゴレージの旋律に

別の歌詞を載せた上で

旋律も微妙に変えたものだったんです。

 

トラック15. Ego sumu panis vivus

《スターバト・マーテル》第3曲、

トラック16. Sabia extensión

レチタティーヴォに続くアリアが

《スターバト・マーテル》第4曲、

トラック17. Ego dormivi が第6曲で

トラック18. Te invocamus が第12曲

といった具合(タイトルの日本語訳は省略)。

 

 

オリジナルに別の歌詞を載せる

替え歌はパロディといって

大バッハが自作でやっています。

 

《スターバト・マーテル》に関しても

バッハによるパロディが残ってますから

当時は当たり前だったわけですが

バッハ以外の作曲家でやられると

パクリなんじゃないかと

ついつい思っちゃいますね。( ̄▽ ̄)

 

 

ちなみに

角倉一朗監修『バッハ事典』

(音楽之友社、1993.6.1)の

「パロディ」の項目を読んでいたら

「16世紀以前の音楽では

 歌詞の書き換えのみによる改作には

 〈コントラファクタ contrafacta〉の語を

 用いることが多い」(樋口隆一執筆)

と書かれてました。

 

思わぬところで

今回のCDの

タイトルの由来が分かり

ラッキーでした。

 

 

最後になりましたが

演奏は

ソプラノがマリア・エスパダ

カウンターテナーがカルロス・メナで

エンリコ・オノフリ指揮

セビリア・バロック管弦楽団。

 

編成はヴァイオリン2

ヴィオラ1、チェロ1

コントラバス1、鍵盤1

という小編成です。

 

オノフリは

イル・ジャルティーノ・アルモニコの

コンサート・マスターですから

古楽器演奏でしょう。

 

本盤では第1ヴァイオリンも

担当してますので

弾き振りになりますかね。

 

 

ライナー表紙のマリア像が

なかなか趣があります。

 

イリバレン編曲版《スターバト・マーテル》ライナー表紙

 

全体像はジャケットの内側で

見ることができます。

 

イリバレン編曲版《スターバト・マーテル》ジャケ内側

 

どこが所蔵しているのか

ライナーを見ても

よく分かりませんでした。

 

やっぱり

マラガ大聖堂なのかしらん。