弘田三枝子が
東芝からコロムビアに移籍したように
森山加代子も同様の軌跡を辿っていて
弘田と同様、森山にも
コロムビア時代のベスト盤があります。
それがこちら↓
『森山加代子・しんぐるこれくしょん』
(コロムビアミュージックエンタテインメント
COCP-33086→87、2005.3.2)
コロムビアからリリースした
シングルすべてと
アルバムからの曲を収めていて
弘田の『しんぐるこれくしょん』同様
東芝時代に歌った洋楽カバーの
再録音も収録されています。
再録音の中には
「メロンの気持」もあり
同曲は、その意味でも
代表作のひとつ、と
いえるかもしれませんが
旧録音の方が自分は好きかなあ。
本盤もまた、前回ご案内の
『ヒット・キット・パレード』と並んで
もしかしたらそれ以上に入手が難しく
中古の価格もそれなりにします。
自分は一度
新宿のディスクユニオンで見かけて
ちょっと迷ってスルーした後
もう一度行ってみた時には
すでに棚から消えており
悔しい思いをしたことがあります。
その後 Amazon で
ディスクユニオン北浦和店の
出品を見つけて
ディスクユニオンの通販で購う
という面倒なやり方で買いました。
こちらもやっぱり
新譜CD2枚分を
ちょい超すくらいの
値付けでしたね。
自分が森山加代子という歌手を
その名前はともかく
歌に親しんだのは
コロムビア時代にリリースされた
「白い蝶のサンバ」(1970)で
この曲は鮮烈に覚えています。
それくらいヒットして
森山加代子の再生を
印象づけたようですけど
自分の記憶が
それだけであることからも
察せられる通り
それ以上のヒットには
恵まれなかったようです。
「白い蝶のサンバ」にしても
♪あなたに 抱かれて
わたしは 蝶になる
という歌い出しの
AメロからBメロまでが
早口言葉のように感じられるという
ノベルティ性が印象に残った
といえなくもないわけで。
再起後の路線は
いわゆるフェロモン歌謡
というところでしょうか。
ムード歌謡か演歌
という印象を受けもするのは
歌詞の内容や歌い回し、
テンポやアレンジもさることながら
演歌歌手のアルバムによくある
他の歌手の曲をカバーする企画にも
関係するのではないかと思います。
もっとも
出すアルバムの収録曲が
すべてオリジナルというのは
当時の歌謡曲において
少なかったようですけど。
DISC2にアルバムの
『ヒットソングをうたう』(1973)が
まるまる収められていて
懐古的気分に浸れる
というと倒錯的ですけど
こういうカバー企画は
自分も最近になってようやく
興味が持てるようになりました。
弘田三枝子のように
ジャズ・シンガー的な
突出した歌唱力がない分
わりを食ったというか
再生後、シンガーとして
短命に終わった理由は
東芝時代を彷彿させる
ノベルティ性のある曲が
少ないからではないか、と
個人的には思っています。
時代の嗜好というのもありますし
根強いファンはいるかと思いますが
懐古的な受容を越えるものでは
なかったのではないか
と考える次第。
コロムビア時代の最後のシングル
「恋の魔法使い」(1974)の
エレキを効かせた
リズミカルで力強い路線を
続ければ良かったのに
と素人考えで思うんですけど。
ちなみに
同曲の編曲を
馬飼野俊一が担当しているあたり
妙に腑に落ちる感じ。
東芝時代の
数々のノベルティ・ソングは
今、聴いても新鮮です。
昨年リリースされた
『GOLDEN★BEST』が
きっかけとなって
再評価が進むといいと
思ってるんですけど
どうでしょうか。