前回、ご案内の

『オリアーナの勝利』を編纂した

トマス・モーリーは

当ブログではお馴染み、

皆川達夫のガイド本

『ルネサンス・バロック名曲名盤100』

(音楽之友社 ON BOOKS、1992)にも

項目が立っています。

 

取り上げられているのは

「今こそ五月の季節」

というマドリガルで

そこで推薦されている盤が

キングズ・シンガーズの歌う

以下のCDでした。

 

キングズ・シンガーズ『イギリス・マドリガル集』

(東芝EMI. CE33-5277、1988.6.24)

 

こちら、2012年になって

ワーナー・ミュージック・ジャパンから

再発盤が出たようですが

上は初期盤です。

 

タスキ(オビ)がないのは

残念ですけど

中古で見つけた時

(いつどこで見つけたかは失念)

ここで買わないと2度と出会うまい

と思って買ったんだと思います。

 

その予想通り

それ以来、見かけたことはないし

再発盤が出たことも

知りませんでしたから (^^ゞ

買っといて正解でした。

 

 

ジャケット表にある

All at once well met

邦題を「ひと目でじゅうぶん」という

ジョン・ウィルビーの曲名から

採られたものです。

 

ですから正確なタイトルは

ケース裏にあるように

『ひと目でじゅうぶん/

 イギリス・マドリガル集』

となるかと思いますが

皆川の前掲書だと

『イギリス・マドリガル集』

となっていますし

ケース背はもちろん

タワーレコード・オンラインや

Amazon などでも

そうなっていますので

それらに従いました。

 

 

録音は

35曲中11曲が1974年で

3曲が1976年、

残りの20曲が1982年です。

 

その20曲は

デジタル録音だそうですから

アナログ録音との混合に

なるわけですけど

そういわれてみれば

音色[おんしょく]が

微妙にクリアかも。

 

あと、メンバーも一部

アナログ期とデジタル期とで

入れ替わっているようですが

合唱のレベルに

そんなに差があるようには

思われませんし

あまり気にする必要はないかと。

 

 

基本的にアカペラ合唱ですが

一部の曲では、伴奏で

ジャケットで描かれている

リュートが使用されており

1曲だけですけど

太鼓が伴奏する曲もあります。

 

曲の長さは

短いものだと

1分もないものがありますし

どんなに長くても

4分に満たないものばかり。

 

 

歌詞の内容は

恋愛や人生についての

喜びや悲しみを歌ったものが

ほとんどで

中にはイタリア語の歌詞を

英語に訳したものも

あるようです。

 

ひとつだけ

煙草の旨さを歌ったものがあって

(トマス・ウィールクスの

「おいで、さあ、ジャック、さあ!」)

これはちょっと

異彩を放っている感じ。

 

脚韻のために

さして意味のない語彙を

連ねているような歌詞の楽曲もあり

そういうのを見ると

意味は気にせずに

響きを楽しめばいいのか

とも思ったりします。

 

 

ちなみに

皆川達夫は上掲書で

モーリーの楽曲を

「典型的なイギリスのバレット」

と紹介しているのですが

おいおい、マドリガルじゃないの?

とか思ったり。

 

バレットというのは

上掲書巻末の

「バロック小辞典」によれば

イタリアの芸術性の高い作品に対し

簡潔で平明な世俗曲を指すようで

軽快な舞踊リズムと

「ファ・ラ・ラ・ラ……」

という囃し言葉を

特徴とするのだとか。

 

 

他の収録曲も

カンツォネットだとか

リュート・ソングなどと

細かいことをいえば

いろいろ呼び名は異なるようです。

 

まあ、難しいことは抜きにして

イギリス・ルネサンス期の

フォーク・ソング集

だと思って気軽に聴けば

それで充分だろうと

思っていますけど。

 

 

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