(全音楽譜出版局、1986.11.25/1990.4.5. 2刷)
少し前に
横浜での冬期講習が
早く終ったとき
思い立って
新宿のディスクユニオンまで
足を延ばした時に見つけました。
カバーと扉には
「作曲家と演奏家のはざまに」
という副題が付いてますけど
奥付にはありません。
樋口隆一の名前は
バッハ絡みで記憶にありましたし
バッハのCDを買い始めてから
作曲者の直筆譜や写譜を
比較検討して決定される
原典版というものが
あるということも知りました。
でも本書に関しては
特に意識して
探していたわけではなく
どこかで題名を見たか
聞いたかした覚えがあるくらい。
それでも
見つけた時は「おおっ」と思い
2刷でオビもないけど、と思いつつ
現物を見るのは初めてだったことでもあり
次に見るのはいつになるか分からないので
ためらいを捨てて購入した次第です。
(安かったですしw)
バッハの演奏
特に古楽器による演奏のCDを買うと
『新バッハ全集』に拠る
といった注記を
ケース裏やライナーなどで
よく目にしたものです。
いろいろと買っていくうちに
バッハ全集は新旧ふたつがあり
今では『新バッハ全集』に基づいて
演奏されることが多い
ということが分かってきました。
その『新バッハ全集』を始め
新モーツァルト全集、
ベートーベン全集などを例に
作家の意図を汲んだ楽譜
すなわち「原典」が
どういう経緯で作られるようになり
どのような特色があるのか
ということについて書かれた本です。
ベーレンライター版とか
ブライトコップフ版、ヘンレ版
などといった表示は
どういう背景を持つのかということが
よく分かり,勉強になりました。
巻末には
新バッハ全集のほか
バロック以前のスコアを集成した
定量音楽大系および初期鍵盤音楽大系、
ハイドン全集、新モーツァルト全集
ベートーヴェン全集、新シューベルト全集
ワーグナー全集、ブルックナー全集の
本書が出た時点までの各目録が
資料として掲載されています。
リストを眺めていると
樋口隆一以外にも日本人の名前が
ちらほら見受けられて
ちょっと驚かされました。
いくつか(未完)となっていますが
今ではどれくらい出ているのか
こればっかりは
自分で調べるしかないわけですけど
(作者のあとがきでも
それが推奨されています)
インターネットの時代ですから
この本が出た当時に比べると
調べるのが楽になったのはありがたい。
なお、本書の類書として
対象をバッハに絞り
専門的なアプローチを紹介した
小林義武『バッハ——伝承の謎を追う』
(1998/新装版、2004)
という本があります。
そちらに比べれば
広く浅くという感じですが
基本的な知識は得られますので
これはこれでやっぱり
読んどくべきかなと。
というわけで
少し前から就眠儀式がわりに
ちびちびと読んでいたのですが
読みかけで年を越すのも何ですから
本日、残りを一気に読み終えました。
本書が今年、読み終える
最後の一冊になります。
本年も拙いブログをお読みいただき
ありがとうございました。
来年もよろしくお願いします。
良いお年を。