この間、ロバート・ロプレスティの

日本オリジナル編集の短編集

『休日はコーヒーショップで謎解きを』

 

『休日はコーヒーショップで謎解きを』

(高山真由美編訳、創元推理文庫、2019.8.9)

 

を読んでいたら

「消防士を撃つ」という短篇の中に

こんなシーンが出てきました。

 

 ケイトはラジオをいじった。「〈青い影〉ね。この曲、大好き」

「どういう歌詞なの」

「ドラッグがどうとかいってる、たぶん」ケイトは笑った。「親に聞いてみれば。あの人たちはなんでもかんでもドラッグと結びつけるんだから」(p.160。下線部は原文では傍点)

 

語り手のミッキーは12歳で

姉のケイトは

ハイスクールを3日前に卒業したばかり。

 

ケイトは2年前から

小学生を集めたキャンプで

無給のインストラクターを務めており

今回、ミッキーはそれを手伝うため

姉が運転する車でキャンプに向かう途上の

車中での会話です。

 

〈青い影〉という曲名だけが

何の註もなしに出てきてますけど

これはもちろん、というか

ある世代の人にとってはいわずと知れた

オールディーズの名曲だからで

イギリスのロックバンド、プロコル・ハルムの

1967年のデビュー曲です。

 

 

〈青い影〉のメロディーは

なんとなく記憶にありましたけど

歌詞の内容までは知らず

「へえ、そういう歌詞だったのか」

と思って、さっそくで検索してみたところ

YouTube で簡単に音源が見つかりました。

 

せっかくだからと

歌詞つきの映像を観てみたら

これが何かのフェスで演奏された

オーケストラ・アレンジのヴァージョンで

なかなかいい雰囲気だったので

以下に貼り付けておくころにします。

 

 

オーケストラのイントロが終わって

プロコル・ハルムが歌い出すと

いきなり歌詞に

ファンダンゴという言葉が出てきたので

ちょっとびっくり。

 

ファンダンゴって

60年代後半のポップスで使われても

聴き手が違和感を覚えないくらい

向こうでは知られているということですね。

 

 

上に貼付けた映像の訳は

直訳と意訳が混ざっている感じで

ちょっと分かりにくいところもありますから

検索していて見つけた

別の和訳が載っているページのアドレスも

掲げておくことにします。

 

https://studio-webli.com/article/lyrics/277.html

 

上掲ページの訳詞で

「よっと」とあるのは

「ちょっと」のタイプミスだと思います。

 

あとに掲げた方の歌詞和訳では

ファンダンゴをダンスと意訳してますけど

これはまあ、妥当な処理かと思います。

 

いきなりファンダンゴとかいわれても

普通の日本人には分からないでしょうし

自分にしたところで

バロック音楽を聴いてなければ

意味不明だったというか

イメージできなかったと思いますから。

 

 

それはともかく

歌詞全体の意味は、確かに

12歳の子どもにはよく分からないものですけど

ドラッグを歌った内容とも思えず

ケイトの言葉には

親の世代に対する皮肉が

こめられているのかもしれません。

 

と同時に

この歌詞は恋人が浮気(不倫?)した

という内容なので

弟には刺激が強すぎると思って

誤魔化したのかも。

 

 

ところで

〈青い影〉とバロック音楽との関係は

ファンダンゴのくだりだけではなく

Wikipedia によれば

オルガンによるイントロダクションが

バッハの〈G線上のアリア〉の引用だと

いわれているのだとか。

 

そうと知ってみると

CDで持っていたくなるというか

プロコル・ハルムの音楽を

もっと聴いてみたいと思ってしまうわけで。(^^ゞ

 

検索している時に

プロコル・ハルムは

〈青い影〉ばかり有名だけど

初期のアルバムはどれもいいという記事を

目にしていたことでもあり。

 

それと

プロコル・ハルムは

プログレッシブ・ロックの

元祖ないし先駆といわれているらしく

少しばかりプログレに関心もありましたし。

 

 

そんな折も折り

先週、塾の会議で立川に行った際

ディスクユニオンでアルバムを見つけたので

さっそく購入した次第です。

 

『青い影』+4

(ビクターエンタテインメント

 VICP-62732、2004.5.21)

 

自分の場合、こんな感じで

手持ちのCDが増えていくわけですが

まあ、小説鑑賞の際に注釈にもなるし

いいのではないかと。(^^ゞ

 

 

ロプレスティの小説

ないし短編集については

今回の記事が長くなりましたので

また次の機会にでもと思いますが

ひとつだけ。

 

作者のあとがきによれば

「消防士を撃つ」を書き上げて

やはり作家である実姉に見てもらったところ

「一九六七年のアメリカの

ティーンエイジャーを描きながら、

音楽に触れていなかった」ことを指摘された
と書いているのが興味深い。
 
「感覚的な物事を書き忘れ」たというより
音楽が時代思潮やキャラクターの背景を象徴する
記号のひとつだということではないか
とか思ったんですが、違うかな。
 
とまれ、そこで〈青い影〉を出すあたり
作者の背景をうかがわせるような気がしていて
そういう意味でもアルバムを買う意味は
あるのかなと思う次第。
 
やっぱりそこ(買う理由)に落とすのか
という感じで恐縮ですが。(^^ゞ
 
 
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