フェルッチョ・ブゾーニといえば

バッハの編曲と校訂に尽力し

無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ

第2番に基づく「シャコンヌ」や

トッカータとフーガ ニ短調のピアノ版などが

よく知られています。

 

かつては

ピアニストのレパートリーとして

よく演奏されてきましたが

近年は古楽演奏の影響もあり

演奏はもとより録音されることも

少なくなった気もしますけど。

 

ブゾーニが編曲したバッハを収めたCDが

手許には何枚かありますけど

上記したようなわけで

かなり珍しいと思って

好奇心で購ったものだったりします。

 

そのブゾーニが

ゴルトベルク変奏曲をまるまる編曲しており

それを日本人奏者が録音していることを知って

やっぱり、これは珍しいという好奇心が先立ち

さっそく購入して聴いてみました。

 

塚谷水無子『バッハ/ブゾーニ:ゴルトベルク変奏曲』

(Pooh's Hoop: PCD-1712、2018.6.30)

 

リリース月日は

タワー・レコード・オンラインのデータに

拠りました。

 

 

塚谷水無子は手許に

パイプオルガンとポジティフオルガンで弾いた

ゴルトベルク変奏曲のCDがあることもあり

てっきりオルガニストだと思ってましたが

タワレコのプロフィールでは

「ケンバニスト/パイプオルガン奏者」

となっております。( ̄▽ ̄)

 

今回のCDのライナーには

ブゾーニというのはオルガン ヲタクだ

(ここでのオルガンは、もちろんパイプオルガン)

と書いてあって

なるほどそこで響き合うものがあったのか

とか思ったり。

 

実際に聴いてみると

なるほどオルガンっぽいところも

感じられましたが

異形のバッハという感じは

やっぱり残ります。

(特に最後のアリア・ダ・カーポ)

 

塚谷自身の考えでは

当時のピアニズムの粋を凝らして

同時代人にバッハの魅力を伝えようとしたもの

ということになるようですけど。

 

 

ブゾーニの編曲は

ピアノによるバロック音楽の再現を

真摯に追求した結果であり

紋切型のノンレガートで弾くのではなく

当時のピアニズムを掘り下げた後に

バッハの原点に戻ると

新たな発見があるのではないか

とも書いてありました。

 

ノンレガート奏法は

チェンバロの響きに近づけよう

という意識からもきているのだと思いますけど

それを「紋切型」といい

疑問を呈しているところに

ハッとさせられなくもなかったり。

 

ピアノでチェンバロの真似をしてどうする

と言われてるみたいな感じ

とでもいいましょうか。

 

 

ライナーでは各変奏に対して

短いコメントが付いており

これを観ながら聴くと

いっそう楽しめるようになってます。

 

また本盤には

ゴルトベルク変奏曲の他に

ブゾーニが編曲したコラール前奏曲から

「主イエス・キリストよ、我汝に呼ばわる」BWV.639 と

「来たれ、異教徒の救い主よ」BWV.659 が

併録されています。

 

後者についてはライナーに

「原曲譜(3段譜)をみながら

ピアノ演奏したかのような写実性」、

「ピアノの鍵盤では再現不可能な

和音の読み替えが秀逸」と書かれており

ここらへんはオルガン奏者らしい解説

という感じがしました。

 

一般的なCDの解説というのは

まさに紋切型に

曲の背景や作曲者・演奏者の経歴が

書いてあるだけのものが多く

こういう実践的な視線に基づいて

曲の魅力を語るものは少ないので

たいへん貴重だと思う次第です。

 

 

なお、本盤の使用楽器は

ベーゼンドルファー Model 225 だと

ライナーに書いてあったので

調べてみたところ

普通のピアノより鍵盤が4つ多い

92鍵なのだとか。

 

ブゾーニは

オルガンの低音域を

ピアノで演奏できないことに我慢できず

提案して製造してもらったのが

97鍵盤のピアノだったそうで

それよりは5鍵少ないことになりますけど

セミ・コンサート・グランドとして

97鍵のインペリアルに匹敵すると

いわれている楽器みたいです。

 

コンサート・グランドでバッハを弾くのはどうよ

とか思っていましたけど

オルガンの音域をカバーしたかったから

といわれると

何となく納得しちゃうあたり

自分もかなり半ちくもんですな。(^^ゞ

 

 

ペタしてね