前回の記事でもふれた通り
昨日は三鷹市芸術文化センターまで
ムジカ・ポエティカの公演
「受難楽の夕べ」を聴いてきました。
演目はJ・S・バッハのヨハネ受難曲です。
先にも書いた通り
芸術文化センターには
開場(18:30)の30分前に着いたので
近所を散策して古本屋を探し当て
棚をチェックしてから
会場に戻りました。
戻ったのは
開演(19:00)の15分前くらいで
全席自由席だったこともあり
前の方の席は埋まってまして
結局、舞台向かって上手寄り
後方の通路際の席を確保。
字幕が映されるモニターは
下手側に置いてありましたが
文字も大きく、よく見えました。
事前に手持ちのCD(後掲)で予習して
だいたいの流れは押さえていたので
あまり見ることもなかったですけどね。
会場に入ったら
ステージではチェンバロの調律中でした。
合唱は
ハインリッヒ・シュッツ合唱団・東京と
メンデルスゾーン・コーアの混成。
ソリストは
ソプラノ 大塚恵美子
アルト 北條加奈
テノール 及川豊
バス 中川郁太郎という面々。
合唱は上記写真の後方に並び
ソリストは器楽奏者と合唱の間に立ち
ソロになるとステージ正面
下手側に出て歌唱してました。
器楽演奏は
ピリオド楽器を使用する
ユビキタス・バッハ。
写真で確認できる
長い棒状の楽器は
コントラファゴットだと思います。
初めて見ました。
福音史家は
ツェーガー・ファンダステーネ。
チェンバロの脇に
ソリスト寄りに位置してました。
帰ってから
フライヤー(1枚目の写真)の裏を読み
アーノンクール、コープマン、
ヘレベッヘと共演されている方だと知り
遅ればせながらですけど
いち古楽ファンとしては
ちょっと感動ものです。
指揮は淡野太郎で
イエスも演じてました。
指揮者がイエスも演じるというのは
ちょっと珍しいのではないかと思います。
事前情報がなく
会場についてからゲットした
上掲のフライヤーで知って
びっくりさせられた次第です。
通常は奏者の方を向いていて
イエスの台詞になると観客席を向き
朗々と歌唱してました。
ヨハネ受難曲はマタイに比べると
イエスの台詞が比較的、少ない方なので
こういう演奏も可能なのかなあ
と納得しながら聴いてましたけど
ちょっと珍しいものを視聴できたのは
ラッキーだったかも。
初演当時の演奏だと
バッハ自身が指揮したはずですけど
それを考えると今回の演奏は
バッハ自身がイエスのパートを歌った
というふうにもいえるわけで
想像するとちょっと愉快ですね。
演奏には
オーボエ・ダモーレや
オーボエ・ダカッチャも
使われていたようですが
残念ながら弦楽奏者に隠れて
よく見えませんでした。
コントラファゴットは
上掲の写真でも分かるように
楽器自体が大きいので見えましたが
第19曲(アリオーソ「とくと見よ、わが魂よ」)で
リュートと共奏しており
微妙な揺らぎを伴った音を出していて
独特の印象を受けました。
リュートは第20曲のアリア
「熟慮せよ」でも使用されており
その形状ともども
印象的でした。
通奏低音は
ヴィオラ・ダ・ガンバと鍵盤で
鍵盤はチェンバロとオルガン
(ポジティフ・オルガン)を
曲によって使い分けてました。
上掲写真の
舞台上手側で確認できる通り
オルガンの上に
チェンバロの鍵盤が置かれてたみたいで
2弾鍵盤楽器のようになってました。
手許のCDだと
ポジティフ・オルガンだけなので
これも(自分的には)
ちょっと珍しい演奏でした。
基本的に
イエスの台詞とコラールが
オルガンに拠る演奏で
統一されていたように思います。
バッハのヨハネ受難曲は
実をいえばあまり聴くことはなく
手許にあるCDは2種類だけです。
しかもその内の1種類は
ボックスものの中の1枚ということもあり
いまだに聴いていないかも、という
頼りない状況だったりします。(^^;
今回ひさしぶりに、予習もかねて
シギスヴァルト・クイケン指揮の演奏を
聴いたんですけど
(BMGビクター BVCD-1838〜39、1992.5.21)
ぼんやり聴いていると
あまり引っ掛かるところがないくらい
するっとした演奏だったというか。
ヨハネ受難曲はマタイに比べると
劇的な盛り上がりに乏しい
というのが正直な印象でした。
今回、ライブで聴いてみて
第1部は盛り上がりに乏しいという印象は
やはり変わりませんでしたが
それはもしかしたら
弦楽器の活躍が乏しいからではないか
と思うに至った次第です。
素人考えですけれども。
CDでは第2部に入っても
さほど盛り上がる感じはしなかったのですが
コンサートの方では
かなり盛り上がりが感じられました。
ピラトのソロと、合唱との掛け合いで
合唱パートで弦楽器が活躍することもあり
第1部とはかなり印象が変わったのと
指揮と演出によって
緩急によるテンションの違いが
くっきりと際立っていたからかなあ
とか思ったりしたことでした。
例えば、福音史家が
イエスの死を語ってすぐ後の間の置き方や
兵卒が、受刑者の脛を折ったり
イエスの脇腹を刺したりするシーンを語るとき
実際に折ったり刺したりする身振りを
指揮者がするというあたりなどは
印象的でした。
そういえばヨハネ受難曲にも
第1部でペテロの否認が描かれるのですけど
マタイに比べると
さらっとしている印象だったのが
今回、「いたく泣けり」という
アダージョになっている部分は
切々たる感じでした。
ペテロの否認は
マタイ受難曲で聴くと
切々と胸に迫るものがありますけど
それは、その前のシーンで
自分は否定しないということを
イエスに宣言するシーンがあるから
要するに伏線が敷かれていて
物語の流れが見えやすいからではないか
と今回、CDを聴き直した際
思い至っていた次第なんですが
やっぱり実演による説得力も侮れないと
思わされた次第です。
というふうに
自分的に、いろいろな発見があり
ヨハネ受難曲のCDを
もっといろいろ聴き比べなくでは
という思いを新たにさせられました。
でも、これが名演! というのも
寡聞にして
あまり聞かないんですけどね。
やっぱ、リヒターとかなのかなあ。
もしかしたら休憩がないかも
というふうに聞いていたのですが
実際は第1部を終えた後
19:45から15分の休憩が入り
終演は21:40ごろでした。
第1部を終えたあと
出演者が静かに舞台から下がり
拍手をしていいかどうかが分からず
観客が戸惑う中
そのまま休憩になったのは
ちょっと面白かったです。
そういう自分も
拍手していいのかどうかが
分からなかったんですけどね。(^^ゞ
以上、乱文長文深謝。
出演者のみなさん、
スタッフのみなさん、
お疲れさまでした。