(岩波ジュニア新書、2019.3.20)
先週の金曜日
所用で神保町に行った際
立ち寄った三省堂書店で見つけました。
出ていたこと自体
知らなかったので
やっぱり新刊書店を覗くことは
大事だと思った次第です。
自分にしては珍しく
あっという間に読み終りましたが
とてもジュニア向けとは思えないくらい
専門的な内容でした。
バロック以前の音楽については
それを鑑賞する上で
当時の音楽的な慣習など
ルールについて知る必要がある
と思われています。
それは、ある程度、正しくて
例えば当ブログでバッハの音楽や
バロックの知られていない音楽の
感想を書く際
ある程度、親しんでいない人にも
分かるように書こうとすると
ちょっとした苦労を強いられます。
あまり知られていないことを
どこまで説明するか
ちょっとした匙加減が必要になるのですが
さすがに近藤譲は
作曲家であり、音楽史もやっているだけあって
絶妙のバランスで書いているように思います。
もっともそれは自分が
ルネサンス・バロック音楽を
ずっと聴き親しんできたこともあって
少しは慣れているからかもしれませんが
それでも、かゆい所に手が届くような本だなあ
と思えた次第です。
ジュニア向けだからといって
妥協していないのが
いいですね。
あと300ページにも満たない本で
中世以前から1970年代までの
西洋のクラシック音楽史の最低限の知見を
過不足なく描いている点に
脱帽させられました。
自分が好きな古楽演奏のみならず
今、興味を持っているミニマリズムにまで
言及されているのが、すごい。
もちろん、現代に近くなればなるほど
記述が粗くなるのは否めませんが
単に作曲者の名前と音楽的思潮を
羅列するだけにとどまっていないのは
執筆者が執筆にあたって
時代思潮の変化をきちんと見据え
それに従って見取り図を書き
紹介しているからだと思います。
時代思潮の変化というと
堅苦しいですけど
要するに
時代ごとの趣味の変化ですね。
本書を読むと
音楽史の流れは
前の時代の趣味や思潮を
乗り越えようとして
動いてきたことがよく分かります。
そしてそれを
「発展」として捉えるのではなく
各時代ごとに必然性があって
それぞれの時代の音楽が
受け入れられてきたと捉えること
いわゆる文化相対主義的な観点から
各時代について書かれているのも
本書を分かりやすいものに
しているのではないかと思います。
印象的なのは、最後の最後に
音楽は政治的に利用されてきたことを
きちんと書き記していること。
これは現代の社会情勢を意識して
あえて書いたのではないかと思います。
序章における
歴史の捉え方についての記述も
昨今の社会情勢を
踏まえたもののように思えました。
巻末に索引が付いているのも
ジュニア向けの本としては珍しいし
使い勝手を良くするのに与ってます。
本書から各自の興味関心に従って
いろいろな本に手を伸ばしたり
CDなどを聴いたりすれば良いかと。
その意味では
さらに深い知識を得るための
ブックガイドやディスクガイドがあれば
完璧だったかも。
もっともディスクは
音楽史上、重要なものであっても
すぐに廃盤になったりしますし
それでも入手しようとすると
輸入盤がメインになりそうですから
ジュニア向けの本だと厳しいということで
省略されたのかもしれませんけど。
いずれにせよ本書は
西洋クラシック音楽の
だいたいの流れを知りたい方には
超おススメの1冊だと思います。