前回の記事でも書いたように

池袋では古本屋が

八勝堂書店に続いて

夏目書房もなくなりましたけど

なくなるのは古本屋ばかりではなく

中古レコード屋レコファンの

横浜西口ダイエー店も

来年の1月末に閉店します。

 

改装のためか改築のためか

1階にダイエーの入っているビルの

店舗すべてが閉店となるためで

同じビルに入っている

新刊書店のブックファーストも

閉店となります。

 

ブックファーストは

以前は、あおい書店が入っていて

有鄰堂書店とは異なる独特な棚づくりが

そのまま引き継がれていただけに

残念でなりません。

 

横浜駅西口には、まだ

新刊書店なら上記した有鄰堂書店

中古レコード屋なら

ディスクユニオンがありますけど

いろいろな店があって

品揃えが異なり、選択の幅があるのが

いいわけですし

なにより行き慣れた店がなくなるのは

淋しいものです。

 

 

閑話休題。

 

そんなわけで

ただ今、レコファンは

閉店セール中なのですけど

それもあって

いつもより頻繁に立ち寄り

棚を漁っているうちに

超廉価で見つけたのが

以下のCDです。

 

Scott Joplin's Works from Piano Rolls

(米 Biograph Records. BCD-101、1987)

 

スコット・ジョプリンの

「ジ・エンターティナー」(1902)といえば

映画『スティング』(1973)に

テーマ曲として使われて以来

いろいろなメディアで流れるようになり

よく知られるようになりました。

 

もっとも、それが

スコット・ジョプリンという

アメリカの黒人ミュージシャンが作った曲

ということまで知っている人は

少ないかもしれません。

 

自分はたまたま

ラグタイムというジャンルに興味を持ち

何枚かCDを買ったりしたので

レコファンで本盤を見つけた時は

おやおや、ジョプリンか

と思っただけでした。

 

ところが、ジャケットの表紙に

Classic Ragtime From Rare Piano Rolls

とあるのに加え

裏面に掲載されている収録曲のうち3曲が

Played by Scott Joplin

と表示されているのを見て

びっくりした次第で。

 

Scott Joplin's Works from Piano Rolls(ケース裏)

 

ピアノ・ロールというのは

現在のような音盤録音技術がなかった頃

ピアノ演奏を記録する方法として

開発されたものです。

 

打鍵すると

セットされた巻き紙にパンチ穴があく

という仕掛けでロールが作られ

今度はそれを自動ピアノに掛けて

演奏を再現するというシステムで

(オルゴールのネガ・パターンという感じ)

20世紀初頭に

今日よく知られている作曲家の演奏が

制作販売されています。

 

手もとには

ジョージ・ガーシュインの演奏による

ピアノ・ロールを再生したCDがありますけど

まさかジョプリンの演奏のロールが

残っているとは、思いもよらず。

 

なんでこんな捨て値で売られてるんだあ

とか思いながら

おそるおそる購入した次第です。

 

 

収録されているのは全14曲。

 

すべてジョプリンが作曲したもので

上掲写真でも分かるとおり

内3曲はジョプリン自身の演奏ですけど

その他の9曲は

演奏者が表示されておらず

ロール番号(販売用の整理番号)が

書かれているだけです。

 

今でいえば

スタジオ ミュージシャンが

BGM用に演奏した音源のようなもの

といったところでしょうか。

 

 

こういうふうに書いてくると

骨董的価値しかないように

思われるかもしれませんけど

作曲者自身が

どういう演奏を理想としていたかを

よく伝える貴重な資料として

無視できないわけですね。

 

ジョプリンの弾く楽曲は

意外とテンポが遅めですし

ちょっと変わった装飾音というか

不協和音っぽい濁ったパッセージもあって

興味が尽きません。

 

 

とか思って

いい買いものをしたと悦にいっていたら

ジョプリンのピアノ・ロールは

必ずしも演奏そのままといえるものではなく

徹底的に編集された結果

無個性的かつ機械的な演奏になっている

という批判(?)があることを知り

愕然としてしまったという。

 

でも、テンポはさすがに

ジョプリンの意図が

反映されているのではないかしらん

と思っているのですけど

どうでしょう。

 

ロールの回転速度によって

これも編集可能だとすれば

プロデューサーとして記されている

アーノルド・S・キャプリンが

それまでの研究成果などを踏まえ

解釈ないし判断したもの

と考えるべきなんでしょうけれど……。

 

 

ジョプリンのピアノ・ロールが

あまり評判が良くないことを知ったのは

ある本を読んだからですけど

その本については

長くなりましたので、また改めて

ということにしましょうか。

 

 

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