過ぐる土曜日(10月13日)

銀座のヤマハホールで開かれたコンサート

『J. S. バッハ「音楽の捧げもの」

 〜寺神戸 亮のバロック音楽の真髄、

 前田りり子、上村かおり、

 曽根麻矢子を迎えて〜』に

行ってきました。

 

「音楽の捧げもの』コンサート・パンフ

 

下の写真が

ヤマハホールの入っている

ビルの外観です。

 

ヤマハホール遠景(その1)

 

ヤマハホールは7階にあります。

 

 

14:30開場、15:00開演なのに

なぜか14:00開演と勘違いしてて

早目に着いてしまったのですが

すでに、ビルの前には

たくさんの人が並んでおりました。

 

ヤマハホール遠景(その2)

 

すごい人気だなあと思っていたら

これは同じビルの地下

ヤマハ銀座スタジオで行なわれる

さんみゅ〜のライブに

来た人たちだったようで。

 

ヤマハホール会場案内立看

 

そうとは気づかないまま

食事を軽く済ませた後

戻ってみたら

たくさんいた人は消えてまして。

 

焦って7階に行こうとしたら

エレベーターが止まらず

結局、店員さんに聞いて

時間を勘違いしていたことが分かり

時間まで、同じビル内の

CDや書籍の売場を冷やかすことに。

 

もっともCDは買ったので

単なる冷やかしではないつもり。(^^ゞ

 

 

チケットをとったのは

かなり前のことで

そのおかげか

前から5列目の席。

 

舞台向かって下手側の

通路脇の席だったので

気持ち、ゆったりと観られました。

 

 

今回のコンサートは

バロック・ヴァイオリンの

寺神戸 亮(てらかど りょう)を初め

ヴィオラ・ダ・ガンバの上村かおりや

フラウト・トラヴェルソの前田りり子

チェンバロの曽根麻矢子など

バロック音楽ファン

特に古楽のファンなら

一度は名前を聞いたことのある人ばかり。

 

まさにオールスターな組み合わせですが

でも、寺神戸、前田、上村は

CDなどでよく一緒に名前を見ますけど

これに曽根麻矢子が加わったCDを

今まで見たことも聴いたこともありません。

 

かなり珍しいのではないかと。

 

通なら、そこが聴きどころ

となるんでしょうけど

自分はただただ

曽根麻矢子のチェンバロによる

「3声のリチェルカーレ」と

「6声のリチェルカーレ」が聞きたくて

足を運んだ次第です。(^^ゞ

 

 

バッハの『音楽の捧げもの』なら

CDでさんざん聴いたから知ってるよ

と思っていたので

入場の際にもらったパンフレットを

開きもしなかったものですから

初っぱなの演奏が

聴き慣れない曲だったので

びっくり。

 

フランソワ・クープランの

王宮のコンセール 第3番 イ長調が

演奏されたことを

演奏後のMCで知りました。

 

王様に捧げる曲つながり

ということで選曲されたそうです。

 

チェンバロ・ソロが先行する曲や

ヴァイオリンがミュゼットを模す曲が

ありましたけど

後者などは当時の田園趣味を

よく示しているのだろうと

半可通なりに思ってみたり。

 

 

続いて、いよいよ

『音楽の捧げもの』に入りましたが

今回はレクチャー・コンサート風でして

『音楽の捧げもの』の

当時の出版譜のコピーを

ステージのバックに

プロンジェクターで映写しながら

解説を挟んでの進行でした。

 

演奏も

当時の印刷譜のコピーを

使ってのものだったようでした。

 

王宮のコンセールの後

レクチャーがあり

「3声のリチェルカーレ」と

「王の主題による無限カノン」を演奏して

20分の休憩。

 

 

休憩のあとは

出版譜の収録順通りに

王の主題によるカノンから

「2声の逆行カノン」と

「2丁のヴァイオリンによるカノン」

「2声の反行カノン」が演奏され

レクチャーを挟んで

「2声の反行の拡大カノン」および

「2声の螺旋カノン」が

演奏されていきました。

 

それからいよいよ

待ちに待った

「6声のリチェルカーレ」となりました。

 

 

もっとも

「6声のリチェルカーレ」までの

各カノンの演奏が

つまらなかったかといえば

そういうわけではなく

プロンジェクターで楽譜を示しながら

レクチャーされたおかげで

聴きどころが分かりましたし

自分も知らなかった話題が出たりして

楽しめました。

 

「螺旋カノン」の場合

最初はヴァイオリンと

ヴィオラ・ダ・ガンバ(バス・ガンバ)での

演奏でしたけど

(チェンバロは通奏低音)

途中からガンバの御域を越えるため

フルートでの演奏になったのが

面白かったです。

 

そういう演奏をCDなどで

聴いたことがなかっただけに。

 

また「2丁のバイオリンによるカノン」では

ヴィオラ・ダ・ガンバ(バス・ガンバ)を

ガンバ属では一番高い音域のトレブル・ガンバ

(ドイツ語名はディスカント・ガンバ)に

持ち替えての演奏でした。

 

これも、CDなどで聴ける一般的な演奏では

2丁のヴァイオリンを使うか

あるいはヴィオラを使うかなので

たいへん珍しい。

 

トレブル・ガンバは

ちょうどヴィオラくらいの

大きさなんですけど

ちゃんと膝の上に立てて弾いており

そういう奏法が見られたのも

貴重な体験でした。

 

 

「6声のリチェルカーレ」は

2本の手(10本の指)で

6段の楽譜の進行を弾きこなす

という超絶曲。

 

演奏後に

演奏の極限まで求められる大変な曲だが

どうしても1音だけ出せない音符がある

という話も出てました。

 

バッハの楽曲の場合

無伴奏ヴァイオリン組曲や

無伴奏チェロ組曲のように

実際には出せない音、出ない音も

出ているかのように聴こえるような

工夫がされていて

「6声のリチェルカーレ」の

どうしても出せない1音も

曲の流れからしたら当然あるべき音として

空耳するように書かれているのだと思います。

 

人間の耳は、音がなくても

補足して聴いてしまう場合があるらしく

音楽のルール、楽理に親しんでいれば

なおさらそうみたいです。

 

弦楽器の無伴奏組曲なんかで

よくいわれることだと思いますけど

(どこかで読んだ記憶がある)

実際には出せない音でも

たとえば分散和音の最初の音を出すと

聴く方が音を補足して聴くため

まるで和音になっているかのように

聴こえるというわけです。

 

一般的には

楽譜に書かれた音はすべて

弾けるように書かれている

と理解されており

鍵盤楽器の場合

音符と奏者の指は

一対一対応だと思うわけですけど

バロック音楽の場合

必ずしもそうではないことが

あるわけなのでして。

 

そこをまさにバロックの

バロックたる所以

(バロックとは「歪んだ真珠」という意味です)

だとも、いえるわけです。

 

 

「6声のリチェルカーレ」のあとに

レクチャーを添えて

「2声の謎カノン」と

「4声の謎カノン」が演奏され

さらに「王の主題による

フルートとヴァイオリンと通奏低音のための

トリオ・ソナタ」が演奏されました。

 

トリオ・ソナタは合奏曲なので

『音楽の捧げもの』の中でも

いちばん親しみやすいものです。

 

最後に同じ編成で

「無限カノン」が演奏され

終了でした。

 

アンコールは

「6声のリチュルカーレ」の

3声をヴァイオリン、

フラウト・トラヴェルソ、

ヴィオラ・ダ・ガンバが担当し

残り3声をチェンバロが担当する

合奏版でした。

 

 

当日の使用楽器は

バッハが曲を献呈した

フリードリヒ大王(2世)の宮殿に

当時あったであろう楽器に近いものが

選ばれたそうです。

 

ガンバはドイツで作られたもので

ですからトレブル・ガンバは

ディスカント・ガンバと

いうべきなのかも。

 

 

チェンバロは

フリードリヒ大王が好んだ

フランス様式とだけ

説明がありました。

 

2段鍵盤だと思いますが

工房の名前は分かりません。

 

あとにサイン会があったので

そのとき聞けばよかったんですけど

緊張していて忘れていたのは

かえすがえすも不覚なり。

 

 

フルートは

大王が吹いていたものと同じであろう

木管7穴の楽器です。

 

ハ短調の主題だと

出せない音が5つあるとかで

息の強弱で対応する

という話でした。

 

後でサイン会で聞いたら

ぶら下がりを利用して

音程を下げて対応する

と説明されました。

 

そのときは

チンプンカンプンだったんですけど

後で調べてみたら

フルートの場合

息が弱くなると音程が下がるらしく

それを「ぶら下がり」と言うみたいです。

 

あとはフォーク・フィンガリング

という技法で対応するみたいですね。

 

 

フラウト・トラヴェルソは

フリードリヒ大王が得意とした楽器で

王宮の楽団に、指導係として

フルート奏者として有名な

J・J・クヴァンツがおり

優遇されていたようです。

 

『音楽の捧げもの』は

バッハが、大王の宮廷楽団にいる

息子のカール・フィリップ・エマニュエルを

訪ねた際に

バッハが王から出された主題に基づき

3声のリチェルカーレを

御膳演奏をしたことがきっかけで

生まれました。

 

3声に続いて

6声の曲を望まれたバッハが

さすがにその場で

即興で作ることは難しいと判断し

自宅に帰った後

6声のリチェルカーレも含め

全曲を作り上げた

という話が伝わっています。

 

主題を提供した王は

バッハを少し困らせるような

茶目っ気のようなものが

あったのかもしれませんけど

その主題が短調だったため

主題を用いた楽曲を

フルートで弾こうとすると

かなりの技巧が必要とされるようです。

 

これはある種の

王に対する意趣返しではなかったか

とレクチャーで匂わせていたのは

面白かったですね。

 

ちなみに

王は宗教嫌いだったので

2つの謎カノンの添え書きに

聖書からの引用句として

「求めよ、さらば見出さん」と添えたのも

敬虔なルター派の教徒だったバッハの

ある種の皮肉ではなかったか

という話も興味深かったですね。

 

 

終演後、上にも書いた通り

サイン会がありました。

 

CDを買った人に

と言うことだったんですけど

てっきりCDにサインしてもらえるのかと思い

「でも、曽根さんのCDなら

みんな持ってるしなあ

うーん」と悩んだ末

持ってるものを買ったのですが

結局みなさん

パンフにしてもらってましたね。

 

だったら、他の人が参加している、

持ってないCDを買えば良かった

と思ったのですが、後の祭り。

 

 

それはともかく

こちらが、そのサインです。

 

「音楽の捧げもの」コンサート・出演者サイン

 

上村かおりさんのサインは

ガンバを持ったご自身を

デフォルメしたイラストで

可愛らしいですけど

ちょっと苦笑してしまいました。

 

前田さんのサインも

可愛いイラスト付きですが

対して、曽根さんと寺神戸さんのサインは

サインらしいサインですね。

 

……ですけど、まったく読めない。(^^;

 

特に曽根さんのはクール過ぎる……。

 

 

サインをしてもらい

ヤマハホールを出たのが

17:45ごろで

それから某研究会の例会に出るため

神保町まで移動。

 

という具合に

何とも過密スケジュールな一日が

過ぎていった土曜日なのでした。

 

 

以上、長文乱文深謝です。

 

フラウト・トラヴェルソの

奏法について調べていて

アップするのが遅れていまい

遅れてのアップとなったことも

深謝です。

 

 
 
ペタしてね
 
 
 
●訂正と補足(翌日3:30頃の)
 
謎カノンの添え書きですが
「求めよさらば与えられん」
と書いていたのを
パンフレットの記述に従い
「求めよ、さらば見出さん」
と直しておきました。
 
『音楽の捧げもの』には
例えば「螺旋カノン」なら
「調が上昇するように王の栄光も高まらんことを」
というふうに
添え書きのある曲が
いくつかあります。
 
演奏前にその添え書きが
前田さんによって朗読される
という趣向であったことを
付け加えておきます。
 
あと、曽根さんが
2つのリチェルカーレを弾いた際
寺神戸さんが譜めくりをされたので
おおっ、と思ったことでした。