(Sony Music Direct (Japan) Inc.
MHCL-20169、2012.10.3)
太田裕美が山口百恵の曲をカバーしている
ということを知って
慌てて買ってきたのが本盤です。
検索してみたところ
新宿のディスクユニオンにあることが分かり
ちょうど出かける用事があったので
その帰りに寄ってきました。
山口百恵のカバーを集めた
トリビュート・アルバムのCDは
これまでにも何枚か出ているようですね。
本盤はその既発売のものから
4曲をセレクトした他に
アーティストが個人で出した
カバー曲集に収録されているものが7曲、
それに、本盤のための録り下した7曲を加え
傑作選のような1枚にもなっています。
中には、どうしてこれを入れたのか
再録したのかと、首をひねるような
(当方の琴線にひっかからない)
カバーもありましたし
力み過ぎじゃないかと思うのも
あったりしましたが
約半数は「いいかも」と思いました。
Amazon のレビューなどを見ると
これまでのコンピレーション盤は
あまり高い評価を受けていないようですが
人によって好みが分かれるのは仕方がなく
まあ、半分程度の当たりがあれば
いいのではないかと思います。
その、個人的に「いいかも」と思ったのは
以下の8曲です。
南野陽子「冬の色」
BEGIN「夢先案内人」
中森明菜「愛染橋[あいぜんばし]」(再録)
EPO「乙女座 宮」
藤あや子「謝肉祭」(再録)
ケイコ・リー「美・サイレント〜Be Silent」(再録)
徳永英明「秋桜[コスモス]」(再録)
太田裕美「曼珠沙華[マンジューシャカ]」
ちょっと贔屓目も入ってるかも。(^^ゞ
南野陽子が歌う「冬の色」は
ヴィヴァルディ『四季』第四楽章「冬」を引用する
萩田光雄のアレンジもさることながら
歌声が往年の(ということは、つまり
自分が知っている頃の)
ナンノの声そのものだったので
その変わらなさに
びっくりさせられました。
また、ベース・ラインが
『スケバン刑事』の主題歌や
挿入歌によく聴かれるパターンで
まるで「楽園の Door」を
聴いているような感じもしたり。
ちなみに
「楽園の Door」の編曲は
本曲をアレンジしたのと同じ
萩田光雄だったりします。
これ、完全に狙ってるでしょう。(^~^)
山口百恵ファンには
ウケが悪いかもしれませんが
個人的には大ウケすると同時に
感涙ものでした。
中森明菜の「愛染橋」は
『MOMOE TRIBUTE Thank You For. . . 』
(2004)からの再録ですけど
自分が聴くのは今回が初めて。
これを聴くと
明菜がポスト百恵といわれていたことが
腑に落ちるような気がします。
藤あや子の「謝肉祭」は
当人のカバーアルバム
『WOMAN』(2011)からの再録。
藤は、いわゆる演歌歌手ですけど
「謝肉祭」は演歌に傾かず
実に自然な形で歌われていて
良かったです。
ちなみに「謝肉祭」(1980)の
オリジナルのアレンジは
久保田早紀の「異邦人」(1979)を
彷彿させるものがあったので
萩原光雄かと思ったら
その早世が惜しまれている
大村雅朗でした。
なるほど、当時の
エスニック歌謡ブームに
棹さす1曲であったかと
今さらながらに気づかされたり。
肩の力が抜けていると同時に
本人っぽさが嫌味なく出ている
ということでは
BEGINの「夢先案内人」や
EPOの「乙女座 宮」も
いい感じ。
それらに比べると
徳永英明の「秋桜」は
徳永らしいし、悪くはないけど
らしすぎて、逆に
やや物足りないかも。
それでも「いいかも」と
思っちゃうんですけどね。(⌒-⌒; )
ジャズ歌手ケイコ・リーの
「美・サイレント〜Be Silent」は
2007年にリリースされた
同名のシングルからの再録。
(ちなみに c/w は「秋桜」です)
歌詞はすべて英語で
「♪あなたの」という原詞が
「♪A natural」ないし「♪Un-natural」
となっているんですけど
それが「♪あなたの」と聴こえることに
ただただ感心してしまいました。
まあ、それだけで
いいと思ったようなものですが
こういう言葉遊び心は好きなのです。(^^ゞ
で、お目当ての太田裕美ですけど
「曼珠沙華」がアルバムのタイトル曲であり
シングル『美・サイレント』のB面曲なだけに
熱心なファンではなかった自分には
親しみという点で
今ひとつなところもあり。
幸い、手許にある
『山口百恵ゴールデン☆ベスト
コンプリート・シングルコレクション』に
(Sony Music Direct (Japan) Inc.
MHCL-20053〜4、2009.8.19)
収録されていましたので
聴き比べることはできましたけど。
オリジナル版は
ドスが利いているというか
エレギがギンギン鳴るところと
アコースティック風に鳴るところとの
静と動の対比が聴きどころなんでしょう。
アコギ風の演奏しているバックで
鳩笛らしき音がするのも印象的なら
スイッチが切れるようなエンディングも印象的。
このエンディング、
ロックに詳しい人なら
誰それみたいだ、とか
何かもっといえそうな気がするんですけど
残念、語彙が足りなさ過ぎる……。(´・ω・`)
太田裕美版は
ヴァイオリンとフォークギターが
伴奏の中心を担い
そこに太田のあの声が被さって
ロックとは異なる
しっとりとした雰囲気を
醸成しています。
自分の知っている範囲だと
さだまさしのやっていた
グレープっぽいというか。
これはこれで魅力的で
太田裕美の世界を
作りあげている気がしますけど
両方ともアレンジが
萩田光雄だと知って聴くと
さらに感慨が深くなるかも。
なお、本盤のライナーには
歌詞を掲載した次のページに
各アーティストのコメントが載っています。
再録音源の場合は
コメントも再録のようですが
書き下ろし分に
なかなか興味深い内容のものもあり
これは読めて良かったと
素直に思いました。
なお、今回
上掲『ヒット曲の料理人』に触発されて
『山口百恵ゴールデン☆ベスト
コンプリート・シングルコレクション』を
久しぶりに通して聴いてみました。
自分がテレビを通してよく聞いていた
懐かしい曲が多いのはともかく
14歳の幼い声が
あるとき突然、大人の声になるので
びっくり。
前に通しで聴いた時も
驚かされたような……。
不思議だし
神秘でもありますね。