
(TOKUMA JAPAN COMMUNICATION
TKCA-72789、2004.11.25)
1970年代前半に放映された
小川真由美主演のテレビ時代劇
『浮世絵 女ねずみ小僧』の
セカンド・シーズンからの主題歌
「急げ風のように」を歌う
平田隆夫とセルスターズによって
リリースされた全シングルのA面・B面と
LPアルバムからの2曲を収める
ベスト盤です。
前にも書きましたけど
『急げ風のように』のレコードを
買ったはいいのですが
反りがひどく音が歪んでいたので
CDになっていないかなあと思い立ち
検索して見つけたました。
平田隆夫とセルスターズは
曲によってはボーカルも担当する
リーダーの平田隆夫以下
女性ボーカル2人と
楽器とコーラスを担当する男性3人とで
構成されたグループです。
後に女性2人が抜け
代わりに
新しく女性1人が入りました。
……ということは
このCDを買って
ライナーの解説を読んで
知ったんですが。(^^ゞ
当初は
ブラジルのミュージシャン
セルジオ・メンデスを
リスペクトしていて
演奏にもラテンな傾向が
色濃く現われているようです。
それもあってか
今、聴いても
まったく古びていないという感じ。
新しい女性ボーカルが入ってからの
8th シングル
「生きながらブルースに葬られ」(1974)は
まだしもなんですけど
それ以降、徐々に
ムード歌謡的な曲調になっていく
というような印象を受けました。
ロス・インディオスとシルヴィアみたい
というか。
(若い人には分からない譬えw)
テンポはいいんですけど
歌詞もメロディー・ラインも
いかにもなムード歌謡
という印象を受ける曲は
あまり好みではありません。
単に個人的な趣味の問題ですが。(^^ゞ
それに初期メンバーの場合
女性ボーカルが2人いたことで
音楽に奥行きがあるというか
音に厚みが感じられて
単調さを脱している感じが
するのですけど。
デビュー・シングルの
「悪魔がにくい」(1971)は
♪おまえが好きさ 好きなんだ
たまらなく 好きなんだ
という冒頭のメロディー・ラインが
どことなく記憶にあり
とても懐かしい感じがしました。
2nd シングルの
「ハチのムサシは死んだのさ」(1972)は
セルスターズの代表曲で
(もっともいちばん売れたのは
「悪魔がにくい」だそうですが)
自分と同じ世代
かつ、テレビを観ていた人なら
歌えないことはないんじゃないか
というくらい
知られている曲でしょう。
で、3rd シングルが
『浮世絵 女ねずみ小僧』の
第2シーズンからの主題歌
「急げ風のように」(1972)です。
それ以外の楽曲は
まったく記憶にありませんが
先にも書いたように
女性ボーカル2人体制の頃の曲は
今でも聴きごたえがあります。
ライナーに掲載されている
平田隆夫インタビューによれば
「ハチのムサシは死んだのさ」に
スキャットでチュチュチュを取り入れて
それがセルスターズの特徴と
見なされたようで
「急げ風のように」の冒頭
チュチュチュと歌い出されるのは
そのためなのだとか。
同じくインタビューによれば
「ハチのムサシは死んだのさ」は
学生運動を背景とした曲だそうです。
太陽は国家権力であり
ハチのムサシは
それに立ち向かって挫折した
学生運動の闘士たちを
象徴しているのだとか。
そういう話を聞くと
「急げ風のように」の歌詞も
反権力的なふうに
感じられてくるから不思議。
ねずみ小僧という存在自体が
反権力のアイコンとして
扱われやすいような気がしますけど
女ねずみ小僧という
アンチ・ヒーロー(ヒロイン)を
主人公としたドラマが作られること自体
そういう時代の空気を
反映しているのではないか
とも思います。
もっとも70年代には
そういうタイプのドラマが
多かったような気はしますけどね。
ちなみに本盤には
セルジオ・メンデスの
「マシュ・ケ・ナダ」のカバーも
収録されています。
これもね、懐かしいというか
このカバーではなく
セルジオ・メンデスのオリジナル(1966)か
それ以外の誰かのカバーなのか
分かりませんけど
どこかで聴いた覚えがあります。
これは予想外というか
思わぬ拾いものでした。
