
(BMGビクター R20E-1011、1998.2.21)
中古で見つけて買ったものだと思いますが
先の記事にも書いたように
日本語の訳詞が欲しくて購入した1枚です。
ですから
たぶん買った時に
1度、聴いたきりでしょう。
今回ひさしぶりに聴き直しました。
ローランス・ブーレイは
フランスの鍵盤楽器奏者ですが
本盤では
指揮とリアリゼーションを
担当しています。
リアリゼーションというのは
合唱や楽器の編成などを
決めることをいうんだと思いますが
詳しくは知りません。
声楽パートは
第1ルソンと第2ルソンが
コントラルトのソロ
第3ルソンで
ソプラノが加わります。
器楽パートは
オルガンと
ヴィオラ・ダ・ガンバがメインで
第3ルソンにのみ
2つのヴァイオリンが加わります。
ヴァイオリンの音は
あまり聴こえない感じですけど。
これらはオリジナルの編成を
踏襲したものだと思いますが
先にも書いた通り
今日、演奏される場合
メインのソロはソプラノではなく
コントラルトかカウンターテナーが
演奏する場合が多く
本盤もそれに従っています。
というか
本番の録音は1954年で
最初期の全曲録音となりますから
今日の傾向に合わせたわけではなく
本盤のリアリゼーションが
今日の傾向の
基になっているのかもしれません。
ちなみに
コントラルトではありますけど
ソプラノ独唱のように聴こえます。
独唱者も女性ですからね。
使用されているオルガンは
orgue Gonzales
(Gonzales の e にアクサングラーブ)
とありますが
これはゴンザレスさんが制作した楽器
という意味なんでしょうかね。
ゴンザレス・オルガンは
スタジオ附属のものもあるようですが
本盤のものは
響きの感じからして
教会附属のパイプオルガンではないか
という気がします。
レーヌ盤の
ポジティフオルガンを聴いたあとだと
パイプオルガンの伴奏は
やや大味な印象を受けます。
マイクの位置のためか
全体的に器楽の音が遠いというか
声楽パートが
強調されている感じがします。
本録音、実をいえば
1970年代になって
疑似ステレオ化されていて
ここに収録されているのは
その疑似ステレオのものだったりします。
もしかしたら
モノラル盤で聴いた方が
美しく聴こえるのかもしれません。
ただ、この盤の歌いっぷりは
古学演奏びいきということも
あるのかもしれませんが
個人的には、あまり
好みではありませんね。
「ルソン・ド・テネブレ」の他に
モテット「聴け、全てに耳を傾けよ」と
復活祭の祝日によせるモテット
「勝ち誇れ、キリストは復活し」の
2曲が収録されています。
モテットというのは
単声ないし多声による
ルネサンス期の宗教合唱曲ですけど
バロック期にも作られていて
時代や国によって様式が異なるため
一言では説明しにくい
というのが
正直なところ。
バッハなんかの作品が有名で
自分もそちらは好きなのですが
クープランのモテットは珍しい。
その意味では貴重な録音です。
収められた両曲とも
ルソン・ド・テネブレより
マイクに近い感じの音で
ソプラノ独唱の
「聴け、全てに耳を傾けよ」は
声楽パートと器楽パートとの
掛け合いも面白く
ヴァイオリンも
よく鳴っているのが分かります。
「勝ち誇れ、キリストは復活し」は
ソプラノとコントラルトとの合唱で
伴奏はオルガンのみ。
合唱や独唱による「アレルヤ」が
実に軽快かつ楽しそうで
キリスト復活の喜びを
感じさせてくれます。
伴奏がオルガンだけというのも
いい感じ。
ライナーの解説と歌詞対訳は
村原京子という人で
これはかなり優れた解説です。
先の記事で
クープランのルソン・ド・テネブレが
ロンシャン尼僧院のために書かれたことや
有名なオペラ歌手が引退して入ったのが
ロンシャン尼僧院だったため
オペラ・ファンが聴きにいったことを
書きましたけど
すべて村原の解説に拠っています。
ソプラノ・パートをコントラルトが歌うのは
当時と現在では
ピッチ(基準音の高さ)は違っていて
当時の響きを再現するには
短3度、下げる必要があるから
ということも書いてあります。
短3度というのは何か
ということまでは
さすがに書かれていませんが(苦笑)
半音で3度下ということですから
現在の基準音がラだとすると
ファとソの間まで下げる
ということになりましょうか。
原盤の解説にも
書いてあることなのかもしれませんが
きちんと紹介してくれるのは
ありがたいことなのです。
