
(1999/岡真知子訳、扶桑社ミステリー、2000.5.30)
ルイス・キャロルこと
チャールズ・ラトウィッジ・ドジスン
(この本の表記ではドジソン)と
コナン・ドイルが協力して
事件を解決するシリーズの第2弾です。
こちらは
出た当時、新刊で買ったものを
本の山の中から
サルベージできたので
オビ付きです。
シリーズ第1作の
『マーベリー嬢失踪事件』を
読了したことでもあり
よい機会なので
第2作も読んでみました。
前作『マーベリー嬢失踪事件』は
1885年の夏に
行楽地ブライトンで起きた事件でしたが
今回は同じ年の10月に
ドイルが医者として開業していた
ポーツマスのサウスシーで
事件が起きます。
ドイルから手紙を受け取ったドジスンが
サウスシーを来訪した折も折
ドイルが検死法廷で
心臓発作で死んだ患者は
自然死とは思えないと証言したため
ちょっとした騒ぎになっていました。
被害者の家族と付き合いのある人間が
心霊術に凝っていたため
死者から直接、真相を聞き出そう
ということになり
降霊会を開いたところ
霊媒を務めていた女性が
謎の死を遂げてしまいます。
その場に居合わせたドイルは
これも殺人であると主張。
やはり現場に居合わせていたドジスンは
事件が解決するまで
当地で足止めを喰らうことになり
しぶしぶ謎の解明に乗り出す
というお話です。
前作『マーベリー嬢失踪事件』よりも
ミステリとしてちゃんとしてるというか
トリックやプロットが
それなりにミステリらしく
考えられている
という印象を受けました。
ただし
ドイルが霊媒殺しの凶器について
見当をつけた時点で
当然抱かれてしかるべき
ある人物への疑惑がスルーされ
当然すべき確認をすることが
関係者の誰の念頭にも上らない
というのは
いくらアマチュア探偵ものとはいえ
いかがなものかと思いました。
特に、読者の頭には
そういう疑問が上るような
書き方がされているだけに
よけいドジスンやドイルが
無能に見えてしまうのでして。
そういうあたりの書き方は
手慣れてないなあ
という感じがします。
あと
『マーベリー嬢失踪事件』の
登場人物たちの「その後」は
それなりに納得できましたけど
今回の登場人物たちの「その後」は
ちょっと納得できない感じ。
ネタバレになるので
これ以上詳しくはいえませんが……。
訳された2作を
読んだかぎりでの印象ですけど
ロゴウは
重要な女性キャラクターを
男性の援助なしに自立するように
まとまりをつけるのが
趣味というか、癖のようです。
サウスシーは
英国海軍の主要基地があることで
有名な場所だそうですが
同時に
ドイルが初めて独立開業した土地として
また、ホームズものの第1作である
『緋色の研究』を書き上げた場所としても
有名な場所だそうです。
『降霊会殺人事件』に出てくる
ポーツマス文芸・科学協会は
ドイルが実際に参加していた
サークルだそうですけど
キャロル=ドジスンが
当地を訪れた上に
その協会でスピーチをしたというのは
まったくのフィクション。
ドジスンは
論理的な思考について
スピーチさせられるのですが
現実のドジスンが
そんな話をしますかねえ
という感じで
違和感ありまくりでした(苦笑)
本書の最後(p.478)で
ドイルの原稿を読んだドジスンは
ポーやウィルキー・コリンズの作品を
読んでみるよう勧めています。
キャロルはポーを読んでいた
というエッセイを
何かで読んだ記憶はありますが
ウィルキー・コリンズまで
読んでいたかどうか。
そういうところに目くじらを立てるのは
野暮なのかもしれませんけど。( ̄▽ ̄)
ロゴウは
本書のあとも
The Problem of the Evil Editor(2000)
The Problem of the Surly Servant(2001)
と書き続けているようですが
残念ながら(かな? 微妙だけど w)
翻訳はされていません。
『降霊会殺人事件』の
訳者あとがきによれば
第3作 The Problem of the Evil Editor は
舞台をロンドンに移し
オスカー・ワイルドが登場するようです。
そう聞くと
ちょっと読みたくなってきますが
うーん。( ̄ー ̄;
