『大映特撮映画DVDコレクション』43
(ディアゴスティーニ、2016.5.10)

奥付は5月になっていますが
発売は4月12日です。


『大映特撮映画DVDコレクション』の
第1巻『大怪獣ガメラ』が出たのは
2014年9月2日のこと。

それ以来、書店で目にはしてましたが
欲しいと思う作品は
すでに持っている場合が多いのと
揃えるなら分冊百科でなく
正規の販売のものが欲しい
と思ったりしてたので
触手が伸びなかったところ
たまたま書店に行ったら本巻が目について
思わず買ってしまったのでした。


『氷柱の美女』は
江戸川乱歩『吸血鬼』の映像化で
まさかこの作品の
フィルムが残っているとは
思いもよらず。

リバイバル企画などで
劇場で上映されていたのかもしれず
自分が知らなかっただけかもませんが
ソフト化は初めてではないでしょうか。


戦後の乱歩映画は
「心理試験」を原作とする
『パレットナイフの殺人』で
1946年に公開されました。

制作は
『氷柱の美女』と同じ大映ですが
残念ながらフィルムは
残っていないようです。

続いて1948年に松竹が
『一寸法師』を映像化しましたが
これもフィルムが残っていないようです。

このあと
1948年の『幽霊塔』(大映)
1949年の『白髪鬼』(同)と続いて
戦後5番目の乱歩映画が
1950年に公開された
『氷柱の美女』であるわけです。

監督は久松静児と遠藤俊雄
脚本は高岩肇で
久松と高岩は
『パレットナイフの殺人』でも
監督と脚本を担当したコンビです。


さっそく観てみたところ
原作とは犯人の設定が違っていて
静子(原作では「倭文子」)を
氷柱に閉じ込める必然性が
今ひとつ弱い気がしました。

明智を演じたのは岡譲二で
二枚目俳優なんでしょうけど
個人的な趣味からすると
ちょっとイメージが違う感じ。

乱歩の原作で
後に明智夫人となる文代は
単なる明智の助手
という設定に変わっていて
行動力はありますが
推理力は今ひとつ。

なかなか御輿を上げない明智に
怒って罵声し
電話を叩き付けるように切る
直情径行的な感じの文代は
今につながる
女性探偵助手のひとつの類型かも
とか思ったり。

小林君も登場しますが
失礼ながら
チンピラ別働隊みたいで
魅力に乏しい。

文代とのやり取りは
『ウルトラマン』の
フジ隊員とホシノ君を彷彿させたり。


その他もろもろありますけど
こういうのは
当時の風俗や時代精神を
偲ばせるのが
いいわけでして
現在の感覚とのズレを
あえて愉しむべか、と。

映像が暗すぎて
何が起きているのか分からない
というシーンがあるのは
ご愛嬌です。


どうしてこれが
「特撮映画」を謳うシリーズで出るのか
今ひとつよく分かりませんが(苦笑)
出たこと自体は素直に嬉しい。

1950(昭和25)年の映画を
自宅で簡単に観られる
というのが
実にありがたいのでした。


一緒に付いてくる冊子には
なんと!
乱歩と岡譲二
文代を演じた相馬千恵子との
スタジオにおけるスリーショットの写真が
掲載されていました。

わざわざ紀田順一郎に
乱歩だと鑑定してもらったようですが
ファンなら一目で乱歩と分かります。

写真を所蔵しているのは
誰(どこ)なのか
どこにも書いてありませんが
これは初公開ではないかしらん。


というわけで
コアな乱歩ファンにとっては
観逃すなかれ
買い逃すなかれの1冊
と、いえるのではないかと
思う次第です。(^_^)


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