
(Pooh's Hoop PCD-7004、2015.12.1)
バッハのチェンバロ曲は
絶対チェンバロじゃなくちゃダメ!
ピアノならグレン・グールドが一番!
とか思ってた時期もありますけど
もともと大雑把な性格なためもあってか
いいものはいい、とか
思うようになってきた今日この頃。
それに、もともと
いろんな音で聴くのが好きなので
『ゴルトベルク変奏曲』の
パイプオルガンやピアノ
弦楽アンサンブルの演奏も
目について懐に余裕があったら
面白いと思って買ってました。
で、今回のCDですが
Amazon で他のものを検索してたら
たまたま近日リリースのものが
引っかかったんだと思います。
日本人で初めて
ピアノでゴルトベルクを全曲録音した演奏
という惹句に釣られたのは
いうまでもありません。
そういう
ヒストリカルな意味がある録音って
わりと好きなんです。
で、届いたCDのライナーを読んで
びっくりしたのは
神西敦子が
ロシア文学の翻訳家で小説も書いた
神西清(じんざい・きよし)の長女だ
ということでした。
さすがの自分でも
神西清の名前くらいは知っていて
へええ、と思ったのでした。
文学関係者の
息子や娘、孫ということでは
フランス文学者・青柳瑞穂の孫の
青柳いづみこくらいしか
知りませんでしたので
びっくりしたわけでありまして。
で、その神西敦子の
ゴルトベルクですが
これ、いいです。
ピアノはスタンウェイだと
ライナーには書いてありますけど
何というかなあ
自分が使っている MacBook Air で聴いても
ピアノかピアニッシモのレベルの音が
聴き取れなくならない
とでもいいましょうか。
ピアノ音楽の場合
ピアノとフォルテの音域の幅を利用して
表現の幅を広げようというタイプの
演奏がありますけど
というか、そういう演奏が
一般的なのかもしれませんけど
それだと
Mac で聴いた場合
いちいちボリュームのレベルをあげないと
聞こえないということが
しばしばあるわけです。
イヤホンで聴けば
聴き取れるんでしょうけど
申し訳ないんですが
よほどの必要性がないかぎり
そこまではしたくない。
それを思うと
もちろんゴルトベルクという
楽曲の性格にもよるんでしょうけど
神西の演奏を復刻した今回のCDは
そういうレベルのストレスを
いっさい感じませんでした。
聴く環境、状況にもよりますけど
〆切すぎた原稿をあげた夜中
ジン・ソーダを飲みながら
殻付きの南京豆を割って食べつつ
聴いていても
すべての音がクリアに聞こえました。
(不真面目ですみません。;^_^A
クラシックを聴くスタンスでないのは
重々分かってるんですけど……)
そして神西の弾くピアノの音は
どこか懐かしく、優しく
可愛さすら感じられるんだけど
キリッとしています。
ああ、これは
自分が昔、聴いたピアノの音だ
という感じとでもいいましょうか。
だから改めて
使用楽器が何か確認したんですが
まさかの、といったら悪いけど
まあ、一般的な楽器と思われる
スタンウェイとはね。
録音は1970年4月27日と28日で
レコードのリリースは
その翌年の2月です。
今の自分には
グールドよりも
神西の録音の方が
心休まる名盤という感じです。
そういう
すごく個人的な思い入れというか
印象になりますが
これはおすすめ。
ちなみに
黒を基調としたジャケ写は
厳粛な感じですが
ライナーに載っている
ベルリン留学時代のスナップは
失礼ながら
実に可愛らしいです。
昭和のお嬢さんの
おきゃんな感じが出ていて
実にいいのです。
これは
ちゃんとCDを購入した人への
ささやかなプレゼントですね。
とまあ、オジサン趣味のノリで
恐縮ですが (^^ゞ
このCDには
そういう楽しみも
あるということです。
