メディアによっては
文字化けしているかもしれませんので
いい添えておくと
「AMÉLIE」の最初のEには
アクサンテギュが付いてます。

『AMÉLIE アメリ』
(リトル・モア、2001.11.3/2002.3.6. 第7刷)

立川のブックオフで
少し前に見つけたものです。

通常の授業が終了して
しばらく立川に行く機会がないことでもあり
先週、思い切って買い求めた次第。


もう一冊
オビが付いてないのも
売ってましたが
同じく7刷なのに
そちらの方が値段が上
(定価の3分の1ほど)でした。

だったらオビ付きの方を買いますよね。


映画の日本公開が2001年11月17日なので
それに合わせての刊行なのは明らか。

オビにある
「“アメリ現象”日本全国を席巻中!」という惹句は
初版だと
「11月17日公開」とかなんとか
書いてあったのかもしれません。


訳者名はどこにも表記されていませんが
作者名のイポリト・ベルナールが
映画に登場する
売れない小説家と
同じ名前であることから察するに
日本人の書き手がまとめた
日本オリジナルのノベライズだと思います。

かなり力量のある書き手と思しく
映画のストーリーを換骨奪胎して
いかにもフランス人が書いたっぽく
仕上げられています。

本書オリジナルの
ラストの趣向なんか
フランスの書き手っぽい
という印象を受けました。

映画業界のライターかしらん。

アメリが映画館で観ていた映画が
ジャンヌ・モロー主演の
『突然炎のごとく』だと書いてあるのは
映画ライターらしい感じがします。

それにしては
「快傑ゾロ」を
「怪傑ゾロ」と表記したりしてて
ちょっと詰めが甘いのですけれどね。

「怪傑ゾロ」という表記も
ないこともないようですが
少なくとも日本で公開された映画は
すべて「快傑」表記です。

「奇傑ゾロ」とか書いてあったら
チョー感心させられたでしょうに(笑)


閑話休題。


映画では冒頭で
アメリの過去から現在までの
個人史が紹介されていきますが
ノベライズの方は各章に分散されています。

その挿入の仕方が
なかなかうまい。

あと、映画では
ニノがバイトしている
遊園地のお化け屋敷に
アメリが行くシーンがありますが
それはすべてカットされています。

その他は
だいたい映画通りかな。


ニノがアメリに誘い出されて
写真帳を返してもらうときの
銅像の正体にはびっくり。

えー、そうだっけ!?
という感じで
もう一度、観直したくなりました。


もうひとつ驚いたのは
ニノの出自についての記述。

こんなの映画にあったかなあ。

やっぱりもう一度
観直したくなりますね。


その他にも、この本で教えられて
観直したくなった箇所は
いろいろありますけど
ふれておきたいことが
あとひとつ。

八百屋の従業員リュシアンは
映画だと明らかに
マイノリティー系の印象でしたが
ノベライズの方では
単に頭の弱い青年
という説明で済ましていること。

イラストでも
白人青年のように描かれています。

こういうところは
いかにも日本人が書いたノベライズっぽい
と思った次第です。

たぶんフランス人が書いたなら
もう少し政治的なニュアンスというか
社会的マイノリティーへの視点を
感じさせていたのではないでしょうか。

昨今のフランスの社会状況から
今に限って
そう思うだけなのかもしれませんが。


興味深いのは
映画を観た時に抱いていた印象と
小説に書かれている内容から受ける印象とが
かなり違うこと。

大きくは異ならないのですが
細かい場面での心情が
こちらの思っていたのとは
微妙に違っていました。

それはそれで
ノベライズの書き手の解釈だと思えば
興味深いわけでして
ノベライズはノベライズで面白い。

かなり出来がいいと思います。


イラストは「100%ORANGE」が担当。

『地下鉄のザジ』(1959)のイラストを
彷彿させるようなところもあり
作品の雰囲気にも合ってる感じがします。

とか思って
『地下鉄のザジ』のDVDを検索してみたら
いちばん新しい
HDニューマスター版のジャケットは
100%ORANGE のイラストだったので
ちょっとびっくり。


ちなみに
オビを外すと、これこの通り。

『AMÉLIE アメリ』(その2)

ちゃっかりニノが書き込まれていて
翻訳書ではよくある趣向ですけど
オビをとったらスカスカになる装幀よりは
なんぼかマシですね。


しかし
ここまで『アメリ』にハマるとは。

我ながらびっくりです。

こうなってくると
公開当時の映画パンフも
欲しくなってくるなあ(笑)


ペタしてね