
(Ici d'ailleurs / Labels 7243 845402 2 7、1997)
ティルセンの3枚目のアルバムです。
これでブレイクして
その名が知られるようになったのだとか。
アルバムタイトルの Le phare は
「灯台」という意味です。
なぜそういうタイトルにしたか
というのは
いろいろ検索してみて
トラック7の Le Fromveur が
「フロムヴール水道」だろうと見当がつくと
何となく想像がつきました。
フロムヴール水道というのは
フランスの
ウェサン島とモレーヌ島の間にある
難所として有名なの航路です。
1896年にイギリス船籍の
ドラムンド・カースル号の沈没事故は有名なようで
Wikipedia のモレーヌ島の記事に
紹介されていました。
Wiki の記事によれば
1996年に100周年の記念行事が行われたようで
ティルセンのアルバムは
その2年後のリリースですから
何か触発されたのかなとも思う次第で。
Le Fromveur では
船舶の汽笛の音が流れるのですが
フロムヴール水道だと分かると
沈没寸前の断末魔のように聴こえてきたり。
その他に
L'arrivée sur l'île(島への到着)
La noyée(溺れる少女)
Les bras de mer(潮風)
La crise(危機)
といったタイトルの曲がありますから
フロムヴール水道の海難事故をモチーフとした
コンセプト・アルバムではないか
という気がしています。
その意味では
トラック1の Le quartier は
「地域」という意味ですが
そう訳すより
「海域」と訳す方がいいのかもしれません。
上記 Le quartier は
アラブ系のメロディーラインを
連想させるところもある曲で
トラック2の
クレア・ピケットのヴォーカル曲
La rupture(仲違い)なんかもそう。
ヴォーカル曲はこの他に
ドミニク・Aによる
トラック3の Monochrome と
トラック12の Les bras de mer が
収められています。
ドミニク・Aは
本盤以降、ティルセンのアルバムに
参加するようになった
フランス人男性シンガー・ソングライター。
L'absente(2002)の
日本企画盤に付いているライナーには
「フランスの宅録ミュージシャンの
先駆け的存在」で
ティルセンとは「長年の朋友」
と紹介されています。
(執筆は山田蓉子)
あとトラック14の
L'effondrement(崩壊)は
ヤン・ティルセン自身の歌唱だったりします。
トラック8の
L'homme aux bras ballants(武器を下げた男)は
Wikipedia 英語版の記事によると
同題の短編映画にも使われたそうですが
これは、どのような形でも
日本公開されてないようですね。
アコーディオン・メインで
ワルツ風の旋律であることもあって
ティルセンらしさを感じさせる曲です。
トラック10
Les jours heureux(幸せな日)は
クラヴサン、トイ・ピアノ、
ヴァイオリンによる三重奏で
葉加瀬太郎を連想させるような
軽妙なフィドルが印象的な一曲。
といっても
葉加瀬太郎については
『題名のない音楽会』でしか
観たことも聴いたこともありませんけど。f^_^;
映画『アメリ』には
「溺れる少女」La Noyée
「口喧嘩」La Dispute
「運命の糸に導かれ」Sur le fil
の3曲が採られています。
「溺れる少女」は
アメリがアパートの自室で見つけた
男の子の宝箱を
今は初老の
元の持主に渡すことに成功し
充実感に包まれて
盲人を案内して街を歩くシーンで流れます。
隣人愛に溺れる少女というニュアンスかな?
「口喧嘩」は
意地悪な八百屋の主人の部屋に
初めて入り込んで
いろいろと悪戯をするシーンで流れます。
「運命の糸に導かれ」は
絵を模写している年寄りの隣人レイモンが
アメリが届けた録画ビデオのひとつ
赤ん坊がプールで泳ぐ映像を観る場面の
その録画映像のBGMとして流れます。
この「運命の糸に導かれ」
オリジナルは
前半がヴァイオリン・ソロ
後半がピアノ・ソロ
という構成の7分近い曲で
『アメリ』で使われているのは
後半のピアノ・ソロ部分のみ。
Minimal Piano Collection でも
演奏されていますが
そちらもピアノ・ソロの部分だけです。
前半は、これまた
(というのは Rue dea cascades で
そういう曲があったからですが)
無伴奏ヴァイオリンを連想させる出来ばえ。
ぜひフル・バージョンで聴きたい1曲ですね。
