『ぼくらの民主主義なんだぜ』
(朝日新書、2015.5.30)

高橋源一郎は小説のデビュー作
『さようなら、ギャングたち』(1981)を
初出誌の『群像』で見て
(読んだかどうか記憶にない……)
大島弓子のまんがのコマを
そのまま引用掲載しているものが
群像の新人賞を取るのかあと
思った記憶があります。

小説は
『ペンギン村に陽は落ちて』(1989)
あたりなんかは読んでますが
小説よりも
松苗あけみが表紙を描いている
『文学がこんなにわかっていいかしら』(1989)
みたいな
評論の方を
面白がって読んでましたが
いつのまにか
本屋で見かけても
手が伸びない作家になってしまいました。

まんがのようなものも文学と対等に扱う
サブカルも分かるポップな文学者
という感じで受け取っていましたが
それが、だんだん
鼻についてきた
というより
飽きてきたわけなのでしょう。

まあ、今思えば
極めて表層的な読者だったと思います。


そうして何年も過ぎたころ
内田樹の『ためらいの倫理学』(2001)を
角川文庫版で読んだときに
高橋源一郎が評価されているのを知って
へえーと思ったものでした。

そして内田樹との共著である
『どんどん沈む日本をそれでも愛せますか?』
(2012)なんかを読んで
無性に面白く思ったわけですが
去年出た
『「あの戦争」から「この戦争」へ
 ニッポンの小説3』

『「あの戦争」から「この戦争へ」』
(文藝春秋、2014.12.15)

も、めっぽう面白かった。

特に「読めない」ことをめぐる
冒頭の3章分が印象的でした。


今回、取り上げた
『ぼくらの民主主義なんだぜ』は
『朝日新聞』に連載していた
「論壇時評」の原稿を集めたものです。

連載中から
内田樹がリツィートするツィートなどで
よく紹介されていたので
何度か読んだことがあって
それが今回まとめられたということで
即買いしたわけでした。


即買いした割りには
読み終るのに
今までかかったわけですが……

他にいろいろ仕事の関連で
読むべき本があったのも
今ごろまでかかった
理由のひとつですけど
もひとつ、読んでいるうちに
無性につらくなるし
泣けてくる。

それもあって時間がかかりました。

それに加えて
唖然呆然としてしまうような
問題や事件や出来事が
次から次へと出てきて
立ち止って考え込まずには
いられなくなるのでした。


どちらかといえば
というか
どちらかといわずと知れた
ノンポリだった自分が
同時代の時事的な状況について書いた本に
まさかこんなにのめり込むとは
思いもよりませんでした。

それくらい
東日本大震災以来から
今日までの日本は
激動の時を過ごしてきたし
今も揺れ動いているということでしょう。

もっとも
高橋源一郎が
あとがきで書いているように
小説のことば、文学のことばは
社会や政治を語るとき、語る場合に
その力をもっと発揮できるのだとしたら
小説好きの人間がのめり込むのも
無理ないのかもしれませんけど。


あ、まとめちゃった。

まとめちゃいけない本なんですけどね。


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