今日は七夕。

七夕ゆかりのミステリ
といえば
泡坂妻夫に
『織姫かえる』(文藝春秋、2008)
というのがあったなあ
と思ってましたら
以前、こちらのブログで
取り上げてました。

それが
宝引の辰捕者帳の
1冊だったことから連想が進んで
捕物帳は「季の文学」
といわれるくらいなのだから
と当たりをつけて
『半七捕物帳』を繙いてみましたら
「半七先生」という作品が
見つかりました。


すぐに見つけられたのには
秘伝がありまして
(というほど大袈裟なものでも
 ないのですけれどもw)
自分が持っている『半七捕物帳』は
旺文社文庫版ですが
その第6巻に載っている
岡本経一の解説に
作品名を時系列順に並べた
「半七捕物帳作品年表」が
掲げられています。

半七捕物帳は
事件の発生年月が
きっちりと分かるように書かれていて
しかもダブりがないという
整然とした作りになっているので
そういう年表を作成することが
できるわけです。

その年表をチェックすれば
七夕の話があるかどうか
たちまちの内に分かるわけですね。

最初に古本で(え? w)購入した時は
初出リストを付けてくれよと
思ったものですが
こんなふうにひょんなことで
役に立つわけですから
世の中、上手くできているものです。


「半七先生」は
旺文社文庫版『半七捕物帳』の
第3巻に収録されています。

『半七捕物帳(三)』旺文社文庫
(旺文社文庫、1977.5.15)

語り手の「私」が
半七老人の家を訪ねると
いつも通される部屋に
「報恩額」としるされた
額がかかっていて
「半七先生に贈る」と
書かれてある。

聞けば
神田の手習い師匠の書いたもの
ある事件を解決してくれた
お礼だというわけで
その事件の顛末が
語られるという出だしです。


その手習い師匠のところに通っていた
13歳の女の子が
師匠に怒られて泣いて帰ったあと
行方知れずになってしまう
という事件で
当時、手習いの師匠のところで
短冊に願い事を書くというのが
ひとつの行事だったことが分かる。

そういえば
泡坂さんの「織姫かえる」も
手習いの師匠絡みの事件で
やっぱり弟子の子どもたちが
願い事を短冊に書くシーンが
出てきてました。

ちなみに現在では
「短冊」と書きますが
岡本綺堂の小説では
「短尺」と書いて
「たんざく」と
ルビが振ってありました。


それはともかく
事件自体は
失踪した少女が
手習いのことで怒られたのではなく
別の事情であったことが分かった時点で
半七が目星を付けます。

派手な推理とかはありませんが
なるほど江戸時代の
シャアロック・ホームズらしい
一編でした。


ちなみに「半七先生」の初出誌は不詳。

最初に収められた単行本は
1923(大正12)年から
1925(大正14)年にかけて
新作社から刊行された
『半七捕物帳』全5巻だと思いますが
第何巻なのかは
現物を確認していないので
分かりません。

やっぱり第3巻でしょうか。


というところまでは
手許にある
今内孜・編著『半七捕物帳事典』

『半七捕物帳事典』
(国書刊行会、2010)

を繙けば
簡単に分かることに
なっております。


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