『琴・セバスチャン・バッハ大全集』
(BMG JAPAN BVCM-35619、2009.4.22)

先日、久しぶりに寄った
タワーレコード新宿店で見つけました。

ナクソスから出ている
アルヴォ・ペルトのピアノ曲集を買うのが
本来の目的だったのですが
現代音楽のコーナーを見たら
なんか欲しくなりそうなものが
ゾロゾロと見つかり(苦笑)
そのままポストクラシックとかの棚を
見回していたら
目に入った次第。

バッハを琴で弾く演奏がある
ということは知っていたので
おお、これかっ! と思い
購入したのですが
家に帰って販売年月日を見てびっくり。

上にも記した通り
2009年の4月に出たもので
6年ほど前のものが
よくまあ残っていたものです。

それとも最近
というか、ずーっと
再版されてたのでしょうか。

Amazon でも買えます
在庫があるだけでなく
「入荷予定あり」と
表示されてますから
ずーっと再版され続けている
ロングセラーなのかもしれません。


もともとは1969年と1970年に
LPレコードで発売されたもので
1971年に両方合わせて再発されました。

今回のCDは
1971年盤を基にしているようで
オビ(タスキ)に
「初CD化」と謳われていますが
実は一度、CDになってます。

BMGファンハウスから出ていた
『邦楽器の調べ・みやびうた』
というタイトルの
6枚組のBOXものの1枚としてです。

バッハ1枚を聴くため
6枚組のBOXを買おう
という気になるには
それなりの決意がいるものなので
持ってはいませんけど。(^^ゞ

にもかかわらず
なぜ知っているのかといえば
星川京児・田中隆文編の
『邦楽ディスク・ガイド』

『邦楽ディスク・ガイド』
(音楽之友社、2000年11月20日発行)

という本に書いてあるからです。


何となく
琴だけの演奏かと思ってましたが
沢井忠夫と沢井一恵の琴に
山本邦山の尺八が加わり
それだけならまだ分かりますけど
さらには
ギター(中牟礼貞則)
ベース(滝本達郎)
ドラム(猪俣猛)が
サポートとして入っていました。

ほとんどの演奏で
琴と尺八の音が前景化しており
ギターやドラムは目立たないのですが
邦楽器オンリーじゃないのは
ちと残念だったかも。

ギターやドラムが目立つと
途端にジャズのように聞こえるのが
面白いといえば面白いのですが。


バッハのよく知られた名曲が
全23曲入っていて
ある意味
日本人によく知られている
バッハ音楽全集
という感じがします。

冒頭の1曲目は「G線上のアリア」で
尺八がバイオリンのメロディーを演奏。

尺八の音はまるで
フラウト・トラヴェルソ
(バロック時代のフルート)のよう。

どちらも同じ木簡だから
当然といえば当然かもしれませんが。


有名な
「トッカータとフーガ ニ短調」はもちろん
小学校の音楽の授業での
音楽鑑賞でお馴染みの
「小フーガ ト短調」も入っています。

もちろんオルガン曲だけでなく
『音楽の捧げもの』から採られた
「6声のリチュルカーレ」の他
イギリス組曲、平均率クラヴィーア曲集
無伴奏ヴァイオリン・パルティータ
などからも採られています。

有名だし、人気があるのですが
偽作とされているため
古楽器演奏では録音されなくなった
フルート・ソナタ第2番 変ホ長調の
シシリアーナも入っています。


ちなみに、小フーガには
「誓いのフーガ」という異名があることを
今回のCDのジャケットの表記で
初めて知りました。

他にも
『アンナ・マグダレーナ・
バッハの音楽帳』に入っている
有名な「メヌエット」には
「ラヴァーズ・コンチェルト」、
チェンバロ協奏曲第5番のラルゴには
「恋するガリア」という
異名がついています。

1971年盤のために執筆され
今回再録されたライナーを読むと
いずれも、ポップスや映画で使われて
そういう通り名が付いたようで
今となっては忘れられている
(ほとんど言及されない)
そういう情報が分かったのは
思いがけない余禄でした。


旋律の揺らぎは邦楽器ならではのもの。

洋楽器に慣れた耳で聴くと
不安定な感じがします。

冒頭に収録された
「G線上のアリア」の出だしなんて
一瞬「?」という感じでしたから。

「G線上」以外の尺八は
割と旋律が安定しているのですが
そうなると逆に
邦楽器らしくない気もされるという
かなり倒錯的なアルバム(苦笑)

バッハの音楽を聴くというより
琴と尺八の掛け合いや
さらには
ギター、ベース、ドラムが加わっての
セッションの面白さを
楽しめばいいわけで
そういうの好き、という方には
おススメかと思います。


あ、ちなみに
当初の目的だった
ペルトのピアノ曲集も
無事、購入しております。

そちらはまた
機会がありましたら
こちらで取り上げたいと思います。


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