『推理SFドラマの六〇年』
(六興出版、1986年2月1日発行)

副題「ラジオ・テレビディレクターの現場から」

金曜日、ミステリー文学資料館へ
調べものに行った帰り
いつも寄る古本屋さんで見つけました。

へえ、こんな本が出てたんだ
と思いましたが
帰ってきてから調べてみると
以前紹介したことのある
『明智小五郎読本』

『明智小五郎読本』
(長崎出版、2009)

にも、ちゃんと
参考文献としてあがってました。f^_^;


作者・上野友夫は
川野京輔という筆名で
ミステリも書いている人。

1954(昭和29)年、NHKに入局して
松江、広島放送局を経た後
1960年からは東京放送局に移動し
ラジオ・テレビのディレクター
ラジオ・ドラマの演出などを
務めてきたのだそうです。

その松江時代から
ラジオでのミステリ・ドラマに意欲的で
その体験を踏まえて書かれた
ラジオやテレビ草創期の
ミステリ・ドラマをめぐる記述は
たいへん興味深いもので
あっという間に読んでしまいました。


作者が生まれる前の
草創期のラジオ・ドラマや
テレビ・ドラマについても
資料を踏まえて書かれていて
これはこれで勉強になります。

個人的には
鬼怒川浩との交流について
書いてあったのが
めっけものでした。
 
「めっけもの」といわれても
戦後初期の探偵小説に関心のある
研究者かマニアにしか
共感されないでしょうけど。(^^ゞ

ついでにマニアックな話題を書いておくと
『妖奇』という探偵雑誌の
編集に携わっていた
本多喜久夫についての記述もあり
何をやっていたかがうかがえるのも
興味深かったです。


それはともかく
何といっても、自分が聴いていたころの
ミステリ・ドラマの制作裏話と
何をやっていたかという
データが示されているのが嬉しかった。

たとえば、自分には
ジョルジュ・シムノンの『メグレ罠を張る』を
ラジオで聴いたという記憶があり
同じ頃、ノエル・カレフもやったよなあ
と漠然と覚えていたのですが
この本を開くとそれが
1970(昭和50)年の4月に
確かに放送されたことが分かる。

『メグレ罠を張る』は
ハヤカワ・ミステリ文庫で出たもの
(1976年刊)を
たまたま読んでいたので
喜んで聴いた……て、あれ?

時期が前後してるなあσ(^_^;)

ラジオで聴いていたから
買ったのだったかしら。

再放送で聴いたのかなあ……

とまあ、記憶を修正する役に立つ、と
(いや、かえって曖昧になってるし【苦笑】)


あと、宍戸錠が金田一耕助の声を当てた
「連続ラジオ小説」枠の
『悪魔が来りて笛を吹く』。

これは、フジテレビのアニメで
ムーミン・パパの声を当てていた
高木均も出ていました。

毎回、番組の最後に
出演者が聴取者に語りかける
という演出があって
高木均の時は
ムーミン・パパの言い回しで
最後に締めたのを
よく覚えています。

役名までは覚えてないのが残念。


本書の記述によれば
『悪魔が来りて笛を吹く』のあと
唐十郎・李礼仙の『黒蜥蜴』をやって
その後に『悪魔の手毬唄』をやった
となってます。(pp.168-169)

『悪魔の手毬唄』も
聴いていた記憶があるので
(とはいえ、手毬唄の旋律など
 まったく覚えてないのですが……)
だったら、『黒蜥蜴』も
聴いてなくちゃおかしいはずなんですが
そっちは聴いていた記憶がない。

たまたまラジオ欄で見かけたか
そうでないかの違いでしょうか???


もひとつ懐かしかったのが
こちらはテレビ・ドラマですが
土曜ドラマ・サスペンスシリーズ枠で
1977年にオンエアされた
三好徹原作の『閃光の遺産』。

例によってたまたま観てるんですが
これに続いてオンエアされたのが
森村誠一原作の『高層の死角』で
これは観たかどうか覚えてない。

主役が藤岡弘(当時)だったそうですし
原作も読んでたはずだから
観ててもおかしくないのですが
まったく記憶にないです。


とかまあ、いろいろ思い出したり
記憶が混乱したりして
実に楽しい時間が過ごせました。

『太陽にほえろ』を紹介するページ
(pp.158~159)では
殉職する新人刑事を演じた役者のリストに
なぜか松田優作だけ抜けているとか
今イチ不思議なところもあるのですが
それはそれで
クロス・チェックする楽しみもあるわけで
調べものの叩き台としては
ハンディでコンパクトに纏まった
良い本なのではないかと思います。


巻末には
「推理SFドラマ関連年表」が付いていて
ちょっとした確認をするには便利。

できれば索引も欲しかったところ。

それを除けば
ネックは、絶版ということぐらい。

最大のネックですけどねえ( ´(ェ)`)


ペタしてね