あけましておめでとうございます。
今年最初に読み終えたのは
以下の本でした。

(1942/林房雄訳、東京創元社、1957.7.29)
東京創元社から出ていた
『世界推理小説全集』の
第47巻として刊行された作品です。
デイヴィッド・ドッジ(1910~74)は
アメリカのミステリ作家で
日本では(海外でも?)
ヒッチコック映画『泥棒成金』
(1955年公開。原作は1952年刊行)の
原作者として
今日、名を残しているかと思います。
デビュー作は1941年発表の
Death and Taxes で
サンフランシスコで
税金専門の計理士を務めている
ジェームズ・ホイットニーが
共同経営者が殺された事件の
犯人探しに奔走する
という話らしい。
そのホイットニーが再び登場するのが
本書『黒い羊の毛をきれ』です。
こちらを
今年最初に読む本に選んだのは
もちろん今年の干支にかけているわけですが
それだけでなく
物語の時間軸が
大晦日から新年にかけてでしたので
偶然とはいえ
時期的にもピッタリでした。
羊毛取引業者のクレイトンから呼ばれ
息子が業者との取引用の口座から
大金を引き出している原因を
突き止めて欲しいと依頼されたホイットは
(作中では語り手から
ホイットという通称で呼ばれています)
クレイトン・ジュニアが事務所を構えている
ロサンゼルスに向かいます。
ホイットは、ほどなく
クレイトン・ジュニアが
ポーカーのイカサマ師グループの
カモになっていることを知ります。
イカサマの証拠を掴み
ジュニアの眼を覚まさせようとした
ホイットでしたが
それが果たせぬまま
ある晩のポーカーの場で
クレイトン・ジュニアが毒殺されてしまう
というお話です。
前作で殺された共同経営者の妻
キティ・マクレードは
どうやらホイットと恋仲のようで
ホイットに付いて
ロサンゼルスにやってきており
彼女とのユーモラスなやりとりが
作品の味付けになっています。
でも最初から
そういう印象を覚えたわけではありません。
本に挟まれていた栞には
「本格長篇」とあり
中島河太郎の解説には
「本格のあくの強くないもの」
「微温な作風」と書いてあって
ちょっとピンと来なかったというか
話にノレない感じでした。
読んでいる途中に
ホイットとキティの関係が気になって
手許にある向こうの資料を見てみると
ジェームズ・ホイットニーが
シリーズ・キャラクターであることが分かり
その作風が
以下のように紹介されてました。
「ダシール・ハメットが『影なき男』で始め
ジョナサン・ラティマーの
ビル・クレイン・シリーズで頂点に達した
スクリューボール・コメディ・ミステリの
スタイルの伝統を多く有している」
そういわれると
さもありなんという感じで
ホイットとキティが
どんなやりとりで楽しませてくれるか
ということに
興味の焦点が絞られましたので
なかなか楽しく読み終えることができました。
『影なき男』(1934)というのは
ニックとノラ・チャールズが活躍する
夫婦探偵もので
小説はこれ一作ですが
映画化され、シリーズになりました。
ビル・クレインは
ジョナサン・ラティマーの創造した
酔いどれの私立探偵です。
私見ではこれに
クレイグ・ライスの
J・J・マローンと
ジャスタス夫妻のシリーズを
加えてもいいかと思います。
ビル・クレイン・シリーズの初出は1935年。
代表作『モルグの女』の刊行は1937年。
マローン・シリーズの初出は1939年。
代表作『大はずれ殺人事件』の刊行は
1940年ですから
ドッジも、これらの傾向に棹さす作家として
デビューしたということになります。
ドッジはその後
メキシコ・シティを舞台に
タフ・ガイの私立探偵
アル・コルビーが登場する
シリーズを書いたり
『泥棒成金』のような
海外を舞台とするミステリを
書いたりしたようです。
さらに、1969年と1971年に
ジョン・エイブラハム・リンカーンという
シリーズ・キャラクターとする2作を書いて
沈黙したようですが
これが、どういう内容なのか
手元の資料では分かりませんでした。
閑話休題。
『黒い羊の毛をきれ』には
いちおう犯人当てのための伏線も
張られています。
ちょっと日本人には
分かりにくいと思いますけど。
ですから
「本格長篇」と紹介すること自体は
間違ってはいませんけど
スクリューボール・コメディ・ミステリ
と紹介した方が
現代の読者にはアピールしそうですね。
タイトルの『黒い羊の毛をきれ』
Shear the Black Sheep というのは
本に挟まれていた栞の解説によりますと
「《邪魔者は殺せ》に通じる」そうです。
でも、読み終わってみると
そういうニュアンスは
あまりない感じでした。
謎解きまで読んでも
誰が邪魔者なのか
よく分からないし。
本作品の最後で
ホイットはキティと結婚し
そのあと
Bullets for the Bridegroom(1944)と
It Ain't Hay(1946)の2作に
登場するようです。
デビュー作も含め
いずれも未訳ですが
もう1作ぐらい
読んでみたい気がしました。
もっとも、その前に
未読の『泥棒成金』を
読んどくべきでしょうけど。(^^ゞ
というわけで
昨年、一昨年同様
今年も古本ネタで初めてみました。
プロフィールには
「長澤奈央ファン」
と書いているものの
追っかけで動くことも
ほとんどないでしょうから
今年は、こんな感じのネタが
多くなると思います。
奈央ちゃんも
ブログの毎日更新はやめたことですし
こちらもそろそろ
毎日更新の
やめ時かもしれませんが……。
どうなるか分かりませんが
本年もよろしくお願いいたします。

●訂正(約2時間後の)
Bullets for the Bridegroom の
Bridegroom を
Bridgeroom と打ち間違えていたので
直しておきました。
てっきり「ブリッジルーム」だとばっかり
思っておりました。f^_^;
正しくは「ブライドグルーム」で
これは「花婿」という意味です。
今年最初に読み終えたのは
以下の本でした。

(1942/林房雄訳、東京創元社、1957.7.29)
東京創元社から出ていた
『世界推理小説全集』の
第47巻として刊行された作品です。
デイヴィッド・ドッジ(1910~74)は
アメリカのミステリ作家で
日本では(海外でも?)
ヒッチコック映画『泥棒成金』
(1955年公開。原作は1952年刊行)の
原作者として
今日、名を残しているかと思います。
デビュー作は1941年発表の
Death and Taxes で
サンフランシスコで
税金専門の計理士を務めている
ジェームズ・ホイットニーが
共同経営者が殺された事件の
犯人探しに奔走する
という話らしい。
そのホイットニーが再び登場するのが
本書『黒い羊の毛をきれ』です。
こちらを
今年最初に読む本に選んだのは
もちろん今年の干支にかけているわけですが
それだけでなく
物語の時間軸が
大晦日から新年にかけてでしたので
偶然とはいえ
時期的にもピッタリでした。
羊毛取引業者のクレイトンから呼ばれ
息子が業者との取引用の口座から
大金を引き出している原因を
突き止めて欲しいと依頼されたホイットは
(作中では語り手から
ホイットという通称で呼ばれています)
クレイトン・ジュニアが事務所を構えている
ロサンゼルスに向かいます。
ホイットは、ほどなく
クレイトン・ジュニアが
ポーカーのイカサマ師グループの
カモになっていることを知ります。
イカサマの証拠を掴み
ジュニアの眼を覚まさせようとした
ホイットでしたが
それが果たせぬまま
ある晩のポーカーの場で
クレイトン・ジュニアが毒殺されてしまう
というお話です。
前作で殺された共同経営者の妻
キティ・マクレードは
どうやらホイットと恋仲のようで
ホイットに付いて
ロサンゼルスにやってきており
彼女とのユーモラスなやりとりが
作品の味付けになっています。
でも最初から
そういう印象を覚えたわけではありません。
本に挟まれていた栞には
「本格長篇」とあり
中島河太郎の解説には
「本格のあくの強くないもの」
「微温な作風」と書いてあって
ちょっとピンと来なかったというか
話にノレない感じでした。
読んでいる途中に
ホイットとキティの関係が気になって
手許にある向こうの資料を見てみると
ジェームズ・ホイットニーが
シリーズ・キャラクターであることが分かり
その作風が
以下のように紹介されてました。
「ダシール・ハメットが『影なき男』で始め
ジョナサン・ラティマーの
ビル・クレイン・シリーズで頂点に達した
スクリューボール・コメディ・ミステリの
スタイルの伝統を多く有している」
そういわれると
さもありなんという感じで
ホイットとキティが
どんなやりとりで楽しませてくれるか
ということに
興味の焦点が絞られましたので
なかなか楽しく読み終えることができました。
『影なき男』(1934)というのは
ニックとノラ・チャールズが活躍する
夫婦探偵もので
小説はこれ一作ですが
映画化され、シリーズになりました。
ビル・クレインは
ジョナサン・ラティマーの創造した
酔いどれの私立探偵です。
私見ではこれに
クレイグ・ライスの
J・J・マローンと
ジャスタス夫妻のシリーズを
加えてもいいかと思います。
ビル・クレイン・シリーズの初出は1935年。
代表作『モルグの女』の刊行は1937年。
マローン・シリーズの初出は1939年。
代表作『大はずれ殺人事件』の刊行は
1940年ですから
ドッジも、これらの傾向に棹さす作家として
デビューしたということになります。
ドッジはその後
メキシコ・シティを舞台に
タフ・ガイの私立探偵
アル・コルビーが登場する
シリーズを書いたり
『泥棒成金』のような
海外を舞台とするミステリを
書いたりしたようです。
さらに、1969年と1971年に
ジョン・エイブラハム・リンカーンという
シリーズ・キャラクターとする2作を書いて
沈黙したようですが
これが、どういう内容なのか
手元の資料では分かりませんでした。
閑話休題。
『黒い羊の毛をきれ』には
いちおう犯人当てのための伏線も
張られています。
ちょっと日本人には
分かりにくいと思いますけど。
ですから
「本格長篇」と紹介すること自体は
間違ってはいませんけど
スクリューボール・コメディ・ミステリ
と紹介した方が
現代の読者にはアピールしそうですね。
タイトルの『黒い羊の毛をきれ』
Shear the Black Sheep というのは
本に挟まれていた栞の解説によりますと
「《邪魔者は殺せ》に通じる」そうです。
でも、読み終わってみると
そういうニュアンスは
あまりない感じでした。
謎解きまで読んでも
誰が邪魔者なのか
よく分からないし。
本作品の最後で
ホイットはキティと結婚し
そのあと
Bullets for the Bridegroom(1944)と
It Ain't Hay(1946)の2作に
登場するようです。
デビュー作も含め
いずれも未訳ですが
もう1作ぐらい
読んでみたい気がしました。
もっとも、その前に
未読の『泥棒成金』を
読んどくべきでしょうけど。(^^ゞ
というわけで
昨年、一昨年同様
今年も古本ネタで初めてみました。
プロフィールには
「長澤奈央ファン」
と書いているものの
追っかけで動くことも
ほとんどないでしょうから
今年は、こんな感じのネタが
多くなると思います。
奈央ちゃんも
ブログの毎日更新はやめたことですし
こちらもそろそろ
毎日更新の
やめ時かもしれませんが……。
どうなるか分かりませんが
本年もよろしくお願いいたします。

●訂正(約2時間後の)
Bullets for the Bridegroom の
Bridegroom を
Bridgeroom と打ち間違えていたので
直しておきました。
てっきり「ブリッジルーム」だとばっかり
思っておりました。f^_^;
正しくは「ブライドグルーム」で
これは「花婿」という意味です。