
(彩流社 フィギュール彩、2014年5月25日発行)
『ゴジラの時代』より前に
買ってあったんですが
『ゴジラの時代』のあとに
読み終えました。
ゴジラより前に
『モスラの精神史』(2007)
『大魔神の精神史』(2010)
というのが出ていて
それらに次ぐ
「精神史」三部作の掉尾を飾る一冊です。
『モスラ』も『大魔神』も読んでますが
内容は忘れたなあ f^_^;
初代ゴジラを中心的に論じた
今回の本を読んで
いちばん印象的だったのは
初代ゴジラ映画の最後で
オキシジェン・デストロイヤーを持って
海中に入る前の
芹沢博士と尾形の
鉢巻の巻き方に注目して
論を展開しているところでした。
映像図像学のお手本のような
(といっても
映像図像学が何たるかについて
詳しいわけではありませんが f^_^ )
本書の指摘には
ハッとさせられるものがあって
感服いたしました。
あと、著者もあとがきで書いてますが
山根美恵子(山根博士の娘、尾形の恋人)を
ちょっと詳しく論じているところも
いいですね。
香山滋の原作と映画とで
性格設定が違っていたことは
初めて知りました。
『ゴジラの時代』の感想で
女性の位置づけについて
いろいろ書いたのも
本書を読んでいたからかもしれません。
ちなみに
『ゴジラの時代』では
「ある種の生け贄」と規定されていた
三枝未希やモスラの小美人は
本書では
「ゴジラと戦い倒そうとする男」に対する
「ゴジラ=自然を理解し守る女」(p.194)
というふうに規定されています。
これがミレニアム・シリーズになると
「軍人として『戦う女』」(同)が
前面に出てくることになり
「戦後の女性のキャリアパスの変更に
合わせて」変わったのだと
論じられています。
これに対して
山根美恵子に代表される
昭和シリーズの女性たちは
「男性の仕事を補完しつつ
言いなりにならない女」(p.194)
と規定されています。
これは分かり易い整理ですね。
(やや図式的すぎるとはいえ)
ただ三枝未希は
後半、ゴジラと戦うこともあった
と記憶しているのですが……
(違ってたらごめんなさい)
三枝未希の造型は
戦闘美少女系の軸を
補助線に加えても
いいと思うんですけどね。
男性消費者による少女萌え文化
要するにヲタクの視点抜きに
近年のサブカルチャーにおける
少女キャラを論じても
個人的には説得力がない気がするもので。
民間のサルベージ船が
機雷撤去作業を委託されていたこととか
同時代の文化を踏まえて論じていく
カルチュラル・スタディーズっぽい切り方も
興味深かったです。
あと、本書でふれられていた
アメリカ版『ゴジラの逆襲』こと
『火の怪獣、ジャイガンティス』
原題 Giganthis, The Fire Monster
ちょっと観てみたいなあ。
なお
49ページの誤植には目を疑いました。
見逃したことを痛恨のミスだと
著者も思っているかもしれませんけどね。
妄言多謝。
