
(2012/小林宏明訳、講談社文庫、2014.9.12)
ゴダードの『血の裁き』の次に読了しました。
講談社文庫、上下本シリーズの一環
といいたいところなんですが
続けて、いまだ未読の
マイクル・コナリーを読むべきところ
本書の次に『その女アレックス』を
読んでしまったので
流れが途切れちゃいました。f^_^;
リー・チャイルドは以前
『前夜』(2004)という作品を
本ブログで紹介したことがあります。
その後、
トム・クルーズ主演で映画化された
『アウトロー』(2005)が訳されましたが
タイミングを外して読めておらず
今回ので久々に読んだことになります。
本作品は
お馴染みのシリーズ・キャラクター
(で、トム・クルーズが演じた)
ジャック・リーチャーが活躍する
シリーズの第17作になります。
訳者あとがきにもあるように
途中の7作品をすっ飛ばしての翻訳で
特に、以前読んだ『前夜』が
まだ軍警察時代の話だっただけに
いつの間に放浪者になったんだと
思ってしまいました。
というのもジャック・リーチャー、
ヒッチハイクしながら移動しているようで
平成仮面ライダー風にいえば
通りすがりのワンマン・アーミー
というキャラクターなのです。
もしかしたら1作目の
『キリング・フロアー』(1997)で
すでにそうだったのかもしれず
だとしたらその第1作は
未読なのかもしれませんが
(単に忘れただけかもしれないけどw)
いきなり『最重要容疑者』から読んでも
特に問題はありませんでした。
今回は、ヒッチハイクで同乗した車が
どうやらカー・ジャックにあったことが
運転しているうちに分かってくる。
そのヒッチハイクした車内の描写と並行して
アイオワ州で起きた殺人事件の捜査が描かれ
その二つの流れがつながっていく
という構成の話なのですが
単なる殺人事件かと思いきや
その意外な背景が徐々に明らかとなり
最終的にリーチャーは
ワンマン・アーミー的かつ超人的な
獅子奮迅の活躍を見せる
というお話なのでした。
こういうふうに紹介すると
マッチョなヒーローもの
という感じなのですが
リー・チャイルドの作品の魅力は
リーチャーが知的なところにあって
訓練を積んだプロが
その能力を使って
事実を把握し、推理し、
リスクなども考慮した上で行動する
というところが実にいい。
そこらへんが
ゴダードの『血の裁き』とは正反対で
ゴダードの小説は
素人が巻き込まれて迷走するのが
面白さのキモなわけですが
リー・チャイルドの方は
プロフェッショナルの
計算に基づいた行動が
面白さのキモになります。
そのプロとしての判断が
シャーロック・ホームズのような
推理の冴えを垣間見せるときがあり
また、根拠に基づく行動ですから
前にも書きましたが
読んでいて気持ちがいいわけです。
文章は、ちょっと
エド・マクベインを思わせるような
ところがあります。
というのは、
出来事を描写するというより
今、登場人物が使っているモノは
これこれこういう性能があって
こういうふうに使うと、こうなる
という説明的記述があってから
実際に何が起きたかを描いていく
という書き方をしているからです。
別にこれは
マクベイン固有のスタイル
ということでは
ないでしょうけど
マクベインの小説を読んでて
よく出てきた書き方かなあと。
軽妙な会話のやりとりもあり
途中で出てきた
アルファベットのAが入った単語を使わずに
一分間しゃべる方法な何か、という
とんちクイズみたいなネタで
エンディングをしめるあたりは
絶妙でした。
シリアスな場面で
こういうとき、軍隊なら出てくる
言い回し(ジョーク)があるんだが
FBIにはないんだろう
軍隊で通用することが
FBIにも通用するかどうかは
分からない
組織はそれぞれだから
自分は何も言わなかった
というフレーズが何度も出てきて
シリアスなんだけど可笑しい
深刻ぶらないという
ユーモア感覚も絶妙です。
肩のこらない娯楽読物として
おススメしたいですね。
自分は観てませんが
映画化されて人気が出たのかしら?
だとしたら、今後とも
邦訳されることを
期待したいところです。
ちなみに本のカバー、
上の写真だと分かりにくいですが
オビを外すとこの通り。

上下巻で1枚の写真になってます。
