
(2012/青木純子訳、東京創元社、2013.12.25)
東京創元社、46判上下本シリーズ第5弾です。
この本が出たのは上記した通り昨年末で
だいたい、年を越した本を
次の年に読むことは少ないのですが
前作『忘れられた花園』(2008)が
面白かったという記憶もあり
(どう面白かったのか、
内容はすっかり忘れていますが f^_^; )
46判上下本シリーズという
ゲームを続けていることもあり
その勢いで読んでみることにしました。
そしたらこれが何と!
大傑作だったじゃありませんか!
たまたま読んだ、に過ぎませんが
手に取らせた偶然に感謝したいです。
以下、結末にはふれませんけど
できれば、まっさらな状態で読むことを
お勧めしたい本です。
それでも
以下の感想記事を読むという方、
その点は、お含みおき下さい。
1961年の、ある昼下がり
イギリスの地方の小村で
家庭の主婦が訪問者を刺殺する
という事件が起きます。
訪問者は、そのころ
近隣のキャンプ場で起きていた
不審者による連続傷害事件の
犯人だと目され
加害者の主婦はおとがめなし
という結果になります。
ですが、その事件を
たまたま目撃することになった
主婦の娘である長女は
訪問者が親しげに
母親の名前を呼びかけたことを
耳にしていたのです。
目撃者の長女は
後に長じて有名な女優となります。
その女優がひょんなきっかけで、
今や老衰で
いつ死ぬとも分からない状態の
母親の過去に関心を持ち、
調べはじめる、というお話です。
物語は、
女優が母親の過去を知ろうとする
現在時の2011年と
母親の若いころが中心となる
空襲下のロンドンを舞台とした
1940年という
二つの時間軸を中心に、
それを交互に挟みながら
進んでいきます。
なぜ母親は見知らぬ訪問者を刺したのか
その動機は何か、という大きな謎が
冒頭に示されるわけですが
その動機を醸成する事情を
カットバックで読者に知らせていく話
かと思いきや、
いや、もちろんそういう話なのですが
単にそういう話だけではなくて……
最初は、ロバート・ゴダード風の
歴史ミステリかと思っていました。
その印象はある程度
間違ってはいないと思いますが
第3部に入ってからは
まるでトマス・H・クックの
記憶シリーズのような
避けられない悲劇へ向かう
運命悲劇のサスペンスが加速します。
そして第4部に至って
予想だにしなかった
どんでん返しに、ぶち当たります。
これには久々に、やられました。
どんでん返しのある小説を
どんでん返しがあると紹介すると
どんでん返しの効果が
薄れてしまうかもしれませんが
これは気づかないんじゃないかなあ。
気づいた人はすごいです。
そして
真相や結末の後味は無類に良いです。
後味が良いだけでなく
少しばかりの苦みというか
ペーソスというものを感じさせるのですが
それが決して
悪い後味につながっていない。
この結末は
見事としかいいようがないですね。
ケイト・モートンには
上にあげた『忘れられた花園』の他に
『リヴァトン館』(2006)が訳されていて
これも、内容は忘れましたが(苦笑)
面白かった記憶は残っています。
邦訳本の装丁(イラスト)も綺麗でした。
上にも名前をあげた
ゴダード風の歴史ミステリ、
大河的なミステリが好きな人
家族の過去を探り、
調べる物語が好きな人には
おススメです。
そうでなくとも、
これを読まずに済ますのは
もったいないと思いますけどね。
