
(2009/坂本あおい訳、
ヴィレッジブックス、2014.2.20)
邦題は「ほね と はね」と読みます。
法人類学者
ディヴィッド・ハンター・シリーズの
第3作です。
第1作目は読んでいますが
第2作目は未読。
そしたら、第2作目で
ハンターを襲った犯人の名前が
本作品内で明かされてました。( ̄▽ ̄)
まあ、すぐ忘れますけど(苦笑)
第2作を未読の方は
ご注意くださいませ。
法人類学者というのは
死体の損傷具合や死体の骨、
死体の周囲にいる昆虫の生態から
様々な情報を科学的に精査する職業です。
『羊たちの沈黙』(1988)で
被害者の口中に残された
蛾のさなぎが手がかりになるのを
覚えている方も
いらっしゃるかと思いますが
つまりは、ああいうタイプの
科学捜査を行なうわけです。
邦題からも想像がつくように
本作品でも、被害者の骨と
死体に残っていた昆虫の種類などから
殺害方法や本来の死体遺棄の場所が
明らかになります。
だから「ほね と はね」という
邦題なわけです。
主人公はイギリス人なのですが
第2作の最後で襲われたことによる
心身のダメージを回復するために
かつて学んだ
アメリカはテネシーにある
法人類学研究所
通称「死体農場」に出張して
恩師を訪ねるのですが
そこで殺人事件に巻き込まれる
というストーリーです。
死体農場 Body farm は
これまでにも海外ミステリで
よく描かれた実在の施設です。
海外ドラマ『CSI:科学捜査班』にも
出てくるそうですから
ご存知の方も多いかもしれません。
主人公のハンターは
そこを管理する法人類学センターの
所長に学んだという設定で
その所長が
地元警察の顧問を務めているから
依頼を受けた所長の調査に
関わることになっていくわけです。
発見された死体は
状況証拠から判断されるより以上に
腐敗が進んでいるとか
すでに死んでいるはずの男の指紋が
現場から発見されたとか
その男の墓を暴いたら
別人の死体が見つかったとか
謎が謎を呼ぶような展開で
もちろん最終的には
すべてに合理的な説明がつきます。
ただ、個人的に気になったのは、
なぜそのような状況が生まれたのか
あるいは、犯人がなぜそうしたのか
という点については
犯人のエゴや
それに基づく挑戦意識で説明されていて
要はサイコ・スリラー的な処理がされていて
ミステリとしての
サプライズの妙味が
感じられないことでした。
また、そういう状況に対して
合理的な説明がついても
それが犯人へと至る手掛りなり
ロジックなりに
つながらないことでした。
結局のところ
プロットそのものは
サイコ・スリラーのそれを
なぞっているわけです。
こちらが予想もしないような
(勘のいい人は、プロットから
見当をつけそうなw)
意外な犯人を最後に提示しますけど
どうしてこいつだと気づかなかったんだ
というカタルシスがない気がするんですね。
もしかすると
再読したら
犯人の身体的特徴を示唆する
巧妙な伏線に気づくのかも知れませんが
一読した限りでは
上記のような印象でした。
で、この本、面白いのは
巻末に「著者ノート」が付いていて
本書やシリーズの
創作の舞台裏が示されていることと
サイモン・ベケットがまとめた
実在のイギリスの法生態学者への
インタビューが付いていることでした。
特に法生態学者のインタビューが面白い。
小説より付録の方が面白いのは
ちょっと困りものですが(苦笑)
法人類学などの科学的手法は
ジェフリー・ディーヴァーなども
取り入れているわけですが
ディーヴァーの方が面白いのは
やっぱりプロット構想力において
一日の長があるからでしょうか。
今回は、アメリカにおける
異邦人としてのイングリッシュマン
という狙いもあったようですが
やっぱり
イギリスの文化風俗を踏まえた
イギリス人目線の作品を
読ませてほしい気がします。
アメリカンなサイコ・スリラーは
アメリカ人の作家に任せればいい
という感じがするんですよね。
