先に紹介した
『アリス物語』を購入した際
オビ裏の発売リストを見ていて
「こ、こんなものを出したのかっ!」
と『アリス物語』以上に
びっくりさせられたのが、この本です。

(真珠書院・パール文庫、2014年6月10日発行)
戦前の探偵小説に詳しい人なら
名前くらいは知っているであろう
とはいえ
今ではほとんど
忘れ去られている作家の作品を
若者向けの叢書で出すというのは
さすがに噂のパール文庫、
よくやるよなあという感じです。
いったいどこから思いついたのか
と不思議に思っていたら
本を買ってみて分かったのですが
戦前に平凡社から出ていた
『現代大衆文学全集』
全60巻(1927~32)の
第15巻『松本泰集』が底本でした。

(平凡社、1928年7月1日発行)
初期配本分ということもあってか
いっとき、よく古本屋で
見かけることのできた本です。
この『松本泰集』に収められた
全6編の中から
色の名前がタイトルについているものを
2編、抜き出して
カップリングにしただけなのですが
それがたまたま両方とも
事件に巻き込まれた若い女性の
冒険と恋の顛末を描く
というプロットなのでした。
それに上記写真に見られるような
今風のイラストをつけて出されると
古風な通俗スリラーが
現代の若い読者にも
通用しそうな話に見えてくるから
あら不思議。
これはコンセプトの勝利ですね。
そのコンセプトを見出した慧眼には
素直に脱帽させられました。
お話自体は両作とも、まあ
とってもゆる~いプロットですので
そこらへんは差し引いて読めば
ハラハラドキドキが
楽しめるかと思います。
表題作の「紫の謎」は
聖マリヤ学院を卒業したばかりの少女が
カバー絵通りの
海老茶色の袴姿で活躍する話なので
萌え要素たっぷり(笑)
まさか松本泰の小説を
「萌え」という言葉を使って
紹介する日が来ようとは
思いもよりませんでした(苦笑)
解説には、底本の情報以外
初出情報など書いてありません。
松本泰については
以前、ちょっと調べたことがありますので
以下に補足しておきます。
「紫の謎」は
内容から推して
少女誌か女性誌に
連載されたのではないか
と思われますが
初出誌不詳です。
上記『現代大衆文学全集15』が
初収録単行本です。
同時収録の「黄色い霧」は
『主婦之友』の1924年9月号から
翌年4月号まで連載されました。
その後、本作品を表題とする
『創作探偵小説集』第1巻として
松本泰が興した奎運社から
1926年に刊行されました。
ちなみに、1924年といえば大正13年。
何と、今から90年前に発表された
大正時代の作品が
平成の御代に新装版で
読めてしまっちゃうわけです。
これがびっくりしないで
いられませうか。
長く生きていると
いろんなことがあるものです。
(しみじみ)

『アリス物語』を購入した際
オビ裏の発売リストを見ていて
「こ、こんなものを出したのかっ!」
と『アリス物語』以上に
びっくりさせられたのが、この本です。

(真珠書院・パール文庫、2014年6月10日発行)
戦前の探偵小説に詳しい人なら
名前くらいは知っているであろう
とはいえ
今ではほとんど
忘れ去られている作家の作品を
若者向けの叢書で出すというのは
さすがに噂のパール文庫、
よくやるよなあという感じです。
いったいどこから思いついたのか
と不思議に思っていたら
本を買ってみて分かったのですが
戦前に平凡社から出ていた
『現代大衆文学全集』
全60巻(1927~32)の
第15巻『松本泰集』が底本でした。

(平凡社、1928年7月1日発行)
初期配本分ということもあってか
いっとき、よく古本屋で
見かけることのできた本です。
この『松本泰集』に収められた
全6編の中から
色の名前がタイトルについているものを
2編、抜き出して
カップリングにしただけなのですが
それがたまたま両方とも
事件に巻き込まれた若い女性の
冒険と恋の顛末を描く
というプロットなのでした。
それに上記写真に見られるような
今風のイラストをつけて出されると
古風な通俗スリラーが
現代の若い読者にも
通用しそうな話に見えてくるから
あら不思議。
これはコンセプトの勝利ですね。
そのコンセプトを見出した慧眼には
素直に脱帽させられました。
お話自体は両作とも、まあ
とってもゆる~いプロットですので
そこらへんは差し引いて読めば
ハラハラドキドキが
楽しめるかと思います。
表題作の「紫の謎」は
聖マリヤ学院を卒業したばかりの少女が
カバー絵通りの
海老茶色の袴姿で活躍する話なので
萌え要素たっぷり(笑)
まさか松本泰の小説を
「萌え」という言葉を使って
紹介する日が来ようとは
思いもよりませんでした(苦笑)
解説には、底本の情報以外
初出情報など書いてありません。
松本泰については
以前、ちょっと調べたことがありますので
以下に補足しておきます。
「紫の謎」は
内容から推して
少女誌か女性誌に
連載されたのではないか
と思われますが
初出誌不詳です。
上記『現代大衆文学全集15』が
初収録単行本です。
同時収録の「黄色い霧」は
『主婦之友』の1924年9月号から
翌年4月号まで連載されました。
その後、本作品を表題とする
『創作探偵小説集』第1巻として
松本泰が興した奎運社から
1926年に刊行されました。
ちなみに、1924年といえば大正13年。
何と、今から90年前に発表された
大正時代の作品が
平成の御代に新装版で
読めてしまっちゃうわけです。
これがびっくりしないで
いられませうか。
長く生きていると
いろんなことがあるものです。
(しみじみ)
