眼の壁/マーガレット ミラー

(1943/船木裕訳、小学館文庫、1998.4.1)

日本で訳されている
マーガレット・ミラーの作品のうち
最も古い時代に書かれたものです。


ミラーは、その活動の初期に
シリーズ・キャラクターを抱えていたことは
前にも書きましたが
本作品はその
シリーズ・キャラクターの一人
サンズ警部が登場する第2作です。

実はサンズ警部が初めて登場するのは
デビュー作から書き次いでいた
精神科医ものの第3作らしく
(本作品の、ひとつ前の作です)
本書がサンズ警部がソロで登場する
第1作となります。


1998年にこの本が出た時は
びっくりしました。

それまで、江戸川乱歩の評論集
『幻影城』で紹介され
名のみ知られていた作品が
いきなり文庫で出たわけですからね。

で、出た時に読んでみましたが
校閲のあまりのひどさに
もっとびっくりさせられました。

とにかく
校正のひどさばかりが印象に残り
内容自体は忘れてました(苦笑)

今回、再読して
なるほど、こういう話だったか、と
記憶を新たにした次第です。


犯人の設定自体は
なかなかトリッキーなんですが
(まるでコナン・ドイルの小説にでも
 ありそうな……)
ミラーがまだ書き慣れてないのか
翻訳が悪いのか
(校閲の悪さで印象を
 倍増しで悪くしてますが【苦笑】)
謎解きに至るまでの部分での
登場人物の心理が
隔靴掻痒というか
今ひとつ
すとんと腑に落ちてこない感じで。

ドンデン返しにあたる部分
(第17章の最後)も
何が起きているかさっぱり分からない。

第18章で
サンズ警部の説明を聞いて
やっと、なるほど、と腑に落ちる感じ。


もっとも謎解きミステリというのは
多かれ少なかれ、そういうものでしょうが
サンズ警部の説明を聞く前に
(上記、第17章のラストで)
やられたっ! と思わせないところが
今ひとつだと思うわけでして。

プロットはよく練られてますが
思わせぶりな書きっぷりが邪魔して
その練られたプロットを
今ひとつ活かしきれていないような
気がします。


舞台は、第2次世界大戦中の
カナダのようですね。

そこかしこに
戦時下であることをうかがわせる
言説が見られますけど
これも今ひとつ分かりにくいのが
もったいない。


海外(の古い評論)では
割と評価されているのですが
自分的には(再読した上でも)
若書きのような印象を
拭えませんでした。

これは改訳してほしい一編です。

少なくとも校正をちゃんとして
誤字脱字改行ミスなどを修正したものを
出してほしいところです。


ちなみに、むかし確かに買って
読んでいるはずなんですが
本が出てきませんで(^^ゞ
今回、近所の某大学図書館に行って
借りてきたものを読みました。

上に掲げた書影は
Amazon から
借りてきたものです。


もちろん(もちろん?)
現在品切れ中です。


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