$圏外の日乘-『ゴーン・ガール』
(2012/中谷友紀子訳、小学館文庫、2013.6.11)

ギリアン・フリンは
『KIZU —傷—』(2006)で
英国推理作家協会賞の
最優秀新人賞と最優秀スリラー賞を
同時受賞した
シカゴ在住の女性作家です。

その後、第2作『冥闇』(2009)が訳されて
今回が第3作目になります。

とはいえ自分は、この作者
今回、初めて読むのでして(^^ゞ

買ってはあります。
だから本が増える。
でも、買っといて良かったー( ̄▽ ̄)=3

楽しみが増えたーo(^▽^)o

今回の作品は
そう感じさせる出来映えでした。


以下、感想を書きますが
いちおうボカした書き方はしますけど
勘のいい人なら
ストーリーの予想がつくでしょうから
まっさらな状態で読みたい人は
以下の感想は読まれませんように。

これは、個人的には、今のところ
今年度の翻訳ミステリの中では
1、2を争うほどの傑作だと思うので
以下の感想を読まずに
すぐ手に取られることをお勧めします。




ニューヨークで
雑誌のライターをしていたニックは
リストラにあって
母親が癌になったこともあり
故郷のミズーリ州に
やはりリストラにあった妻を連れて
帰っていましたが
結婚五周年目の朝、
妻が失踪してしまいます。

すぐに警察に連絡し
捜索に当たるのですが
妻はなかなか見つからず
そのうちにニックに不利な状況となり
妻殺しの疑いがかかります。

いちおう物語は
ニックの一人称で進められるのですが
ニックが必ずしも
信頼できる語り手ではないことが
途中で明らかとなりますし、
失踪した妻の捜査と並行して
妻が書き残した日記が挿入され
その内容とニックの言葉とのズレが
読み手に示されていくため、
読み手もニックが信用できないという
宙ぶらりんな状態で話が進みます。

上巻の途中までは
やや退屈なのですが
ニックに不利な証拠が発見され
だんだんと追い詰められていくあたりから
サスペンスが高まっていきます。

失踪した妻の日記は
夫婦関係が次第に破綻していく
過程が描かれていて
それがサスペンスを高める効果を
あげてもいます。

そして上巻の最後(第一部の最後でもある)で
ニックがある場所であるものを発見するところで
物語は最高潮を迎え
下巻の最初(第二部の最初でもある)で
最初のどんでん返しが来るのですが
そのあとは、話がどう進んでいくのか
まったく予測がつきません。

これだけでもすごいのですが
第三部に至っては
そしてラストは
もう、壮絶なことになります。


これぞイヤミス!!

イヤミス大賞なんてのがあれば
文句なしに今年度の受賞作だろう
と思うくらいの出来映えでした。

書店で手にとったときは
カバー裏の
「大胆な仕掛けと予想外の展開」とか
「海外『イヤミス』の決定版上陸」
といった惹句に釣られたわけですが
このふたつの惹句は過剰広告ではなく
まさにその通りの作品でした。

「大胆な仕掛け」がなければ
ここまで誉めません。

人によって
「大胆な仕掛け」と思うかどうか
差はあると思いますが
プロットは実に緻密です。

だから
上下700ページを超す長さでありながら
読み通せるわけですし
特に下巻のリーダビリティは
半端ではありませんでした。


ニックの妻が
雑誌のクイズ・ライターで
結婚記念日になるたびに
プレゼントに到達するまでのクイズを仕掛ける
という設定が利いていて
ある種のロマンティシズムと
暗号解読の興味と
二重三重の企みの仕掛けとが
作品に彩りを与えているのも
感服させられました。


訳者あとがきに紹介されている
作者の言葉にもある通り
いろんな読み方ができる
間口の広い作品です。

読み終えた人と
いろいろ感想を話したくなる小説
とでも、いいましょうか。

一読すると
男性だけがイヤーな気分になる作品
男性にとっての恐怖小説
という印象を受けるから知れませんが
よくよく読めば、そうではありません。

たぶん、女性も
イヤーな気分になると思います(苦笑)

(もっとも、男性の方が、より
 イヤーな気分になるとは思いますがw)

あるいは、イターい恋愛小説
と感じる人もいるかも知れません。

そこら辺が間口が広い所以でしてね。


何はともあれ、こういうの、好きです。

おススメ(^_^)v