
(双葉社アクションコミックス、2013.7.12)
エル大学の車教授と
女子大生・愛里のシリーズの4冊目。
今回は
ホームズ・シリーズに出てくる
カレーのエピソードに絡めた話と
『緋色の研究』が初めて載った
『ビートン・クリスマス年鑑』に絡めた話、
漱石とホームズは出会っていた
というお馴染みのネタに絡めた話と
アガサ・クリスティが
作家キャリアの初期に失踪した事件を
絡めた話とが収録されています。
最初の、「カレーの問題」は
シャーロキアン的蘊蓄は別として
オチはだいたい見当がつきますね。
次の「ビートンのクリスマス年鑑」は
伏線が素晴しかった。
これには脱帽しました。
どこがどう素晴しいか匂わせるだけでも
勘のいい人には分かっちゃいそうなので
とにかく読んでみてください
としかいえません。
この伏線に気づいた人がいたら尊敬します。
「騎士と漱石」については
お馴染みのネタを上手くまとめたなあ
という感じでした。
シャーロキアン的な内容のレポートを
受け取った大学の先生が怒って
「まじめにやりたまえ!!」と言い
再提出を求めるとは
思えないのですがねえ(苦笑)
最後の「アガサ・クリスティの失踪」には
ふたたびの脱帽をさせられました。
見事な出来映えです。
ホームズがクリスティと婚約した
という説を唱えるシャーロキアンがいるとは
まったく知りませんでしたが
その蘊蓄とクリスティの失踪事件を絡めて
失踪事件の真相を
シャーロキアン的レベルで解決するのみならず
そうした話と
まんがの方のメイン・ストーリーとを
上手く絡めてまとめている力技には
敬服させられました。
特に「チャールズ・オーガスタス・ミルヴァートン」
(「恐喝王ミルヴァートン」
「犯人は二人」の訳題もあり)の記述から
事件の発生年代を特定していく手順が素晴しい。
恐らくこれまでにもシャーロキアンの間で
唱えられている説ではないかと思いますが
そこからクリスティの失踪に絡めていくあたりの
知的サスペンスが素晴しい。
取り扱われている題材が特殊なのですが
これはおススメです。
ネタを考えるのは難しいとは思いますが
末永く続いてほしいシリーズですね。