
(講談社現代新書、2013年6月20日発行)
サブタイトルは「円谷プロの失敗」。
円谷英二の長男・円谷一の息子が書いた
会社としての円谷プロから
創業者の一族が経営から外れる
(会社を乗っ取られる)までを
描いた本です。
「円谷プロ創立50周年」とは
どこにも謳われてませんが
アニバーサリー関連の本の中でも
異色の一冊といえるでしょう。
これはひとつの映像下請け会社が
なぜ経営に失敗したかを描いた
ドキュメンタリーでもありますので
会社経営者にとっては
興味津々の一冊であるかと思います。
会社経営はもちろん
会社勤めすらしたことのない
単なる市井のプータロー、もとい
市井の、いちウルトラ・ファンとしては
制作の裏では
こんなことが起きていたのかと
びっくりすること、ひとしきりで
あっという間に読んでしまいました。
ちょっとびっくりしたのは
平成ウルトラ・シリーズ
(ティガ、ダイナ、ガイア)
の視聴率が低迷していたということ。
ティガなんて
久しぶりの実写版だったし
自分も楽しんで観てたので
てっきり視聴率も良いもんだと
思ってました。
フォームチェンジも新しいなあと
個人的には評価してたんですが
本書の著者的には
マーチャンダイジング的な臭みもあって
今イチだったようです。
そこに立場の違いが見えてきて
たいへん興味深いのですけれど
コンテンツとしてしか見てない世代には
どうでもいいことかもなあ。
ネクサスはともかく
(あれは自分もマニアックだと思ってました)
マックス、メビウスあたりも
てっきり成功してるもんだとばかり
思ってたんですがねえ。
読み進めるうちに
ウルトラのファンであればあるほど
切なくなると思います。
犬神家ならぬ
円谷家の一族内の問題に加えて
旧世代のメンツとか局のメンツとか
そういうものや
資本主義の論理に
がっちりと組み込まれてしまい
迷走を続けたありようが見えてくるので。
それは視聴者であるマニア
ないしは、ヲタク視点では分からない
お家事情でして(たぶん)
ある意味、そういう状況で
平成ウルトラ三部作や
ネクサス以降の作品、
特にメビウスを送り出したのは
奇跡のようなことだったのかと
しみじみと感じたことでした。
それを、のほほんと観ていて
好き勝手な感想を述べていたのか、と
それはしょうがないことではありますが
物哀しい思いがされてきます。
『ウルトラマン80』が
TBSのプロデューサー側の思いつきで
ああいう設定になったのだと知って
(有名な話なんでしょうか?)
いろいろと複雑な思いにかられました。
『メビウス』できっちりと
決着をつけたからいいようなものの……
それでそのプロデューサーに
鬼の首でも取ったように自慢されたら
(もっとも、これはこちらの妄想ですが【苦笑】)
嫌かなあと思ったり。
そんなこんなで、本書は
抜群に面白かったですね。
特撮本というより
会社経営本みたいな気もしますが
(上にも書いたとおり、その失敗例ですけど)
特撮ファン、殊にウルトラ・ファンの
お父さん世代には
おススメしたい一冊です。
裏事情と作品の内容とは別
と考える人には
おススメしませんけれども。
ちなみに
『ウルトラQ dark fantasy』への
言及はありますが
(奈央ちゃんへの言及はありません。
て、念を押すまでもないかw)
『URTRASEVEN X』への言及はありません。
巻末の「円谷プロ略年表」にも出てこないのは
なぜなんでしょうか???
どうでもいいけど、この本を読むと
『ウルトラマンギンガ』を観るのも
複雑な気持ちになってくるなあ(遠い目)
まあ、それでも
のほほんと感想をアップすると
思いますけど(^^ゞ