$圏外の日乘-『ウルトラセブンが「音楽」を教えてくれた』
(アルテスパブリッシング、2013年4月30日)

少し前に読み終わったんですが
これは、近刊予告を見たときから
気になっていた本でした。


『ウルトラセブン』最終回
「史上最大の侵略」後編の
エンディングで流れた
クラシック曲をめぐる一冊です。

その曲がシューマンの
ピアノ協奏曲 イ短調 作品54で
ディヌ・リパッティという
ピアニストの演奏だということは
熱心な『セブン』のファンなら
すでに承知のことかと思いますが
(自分は意識してませんでした f^_^; )
昔はそんなこと、情報として
流れてませんでした。

本書は
著者が子どものころに聴いた
当該曲を確定するまでの歩みを
メインに据えて
クラシックの鑑賞ということにまで
及んだ本です。


で、この本、実に面白かったです。

そもそもクラシックに関心のない人には
もしかすると退屈かもしれませんが
シューマンのピアノ協奏曲の
当てはめぶりを確認しながら
最終回のストーリーを紹介する
第1章第3節の記述は
ちょっと感動させられました。

それくらい熱気にあふれています。


最終回に流れた曲が
シューマンのピアノ協奏曲であること
さらにはリパッティの演奏であることが
確定されるまでの歩みは
情報過多な現代では
想像しにくいかもしれませんが
図らずも時代の音楽受容シーンが
よく感じられて
興味深かったです。

自分は、若い頃は
クラシックにハマりませんでしたが
ここで書かれた音楽をめぐる感覚
特にカセット・レコーダーで
再放送を録音したりとかいったことは
自分も別のテレビ番組でやったので
かなりよく分かる感じですし。


『セブン』でピアノ協奏曲に接したのが
きっかけといえるのかどうか分かりませんが
やがて著者は
クラシック音楽の専門出版社に就職。
その後もクラシックに接し続けている
という人生は
家庭環境その他が
与っていたのだとしても
そういう人もいるんだなあと
感慨深いものがあります。

本書を書くにあたっては
『セブン』の音楽を担当した冬木透に
改めてインタビューしに行っているのも
さすが音楽業界にいるだけのことはあるし
シューマンのピアノ協奏曲の
いろいろなアーティストの演奏を
比較しているのも、さすがです。


『ウルトラセブン』で使われた
クラシックを集めたCDがあることは
出た当時、店頭で見かけて知っていましたが
バロック音楽じゃないし
さすがに買ってなかったんですけど
この本を読むと
リパッティの演奏が聴きたくなりますね。

譜例を引いて説明している箇所も多いので
ほんとは
リパッティの演奏を聴きながら読むのが
いちばんだと思います。


というわけで
検索したら在庫があったので
購入しました(笑)

それを聴いた感想は
また次の機会にでも。