$圏外の日乘-『シャーロッキアン!』3
(双葉社 ACTION COMICS、2012.4.28)

シャーロキアンまんがの第3巻です。

前回、第2巻を紹介した時に
また1年、お預けなのかなーと書きましたが、
1年といわず、ふた月で出ちゃいました(藁

本のオビに「続々重版」とありますけど
そんなに人気があるとは知らなかった。
いつのまに……と、びっくりしてます。


今回は、前後編や前中後編など
長めのエピソードが多く、
また、車教授と愛里の恋の行方に
絡む話が多い感じです。

大学教授と教え子の恋ですからね、
丁寧に決着をつけなくちゃという感じで、
年の差カップルが話題を呼んでいる昨今ながら、
そういう丁寧さは
この作者らしい気がします。


アイリーン・アドラーの
「あの写真は、
 ただわたしの身を守る武器としてだけ、
 とっておくことにします」(日暮雅通訳)
という言葉の解釈をめぐって
リアリストのシャーロキアンで
恋のライバル是方弘青年と
ファンダメンタリストのシャーロキアン
車教授の解釈とが食い違いを見せますが、
その解釈の違いが年の功の違いになっているのが
なかなか見事でした。

ただ自分は、どちらかといえば
是方のような解釈をしていて、
ホームズをすら出し抜いた相手が
写真を持っているのだから
ヘタに手を出すとまずい、と思わせる
という程度に思ってたんですけどね(^^;ゞ


ちなみに
アイリーン・アドラーが登場する
「ボヘミアの醜聞」に
「いまはなきアイリーン・アドラーである」
と書いてあるとは気づきませんでした。

作者の池田邦彦は
いちばん新しい深町真理子訳(創元推理文庫版)を
参照したようですが、
手許にある日暮雅通訳(光文社文庫)版でも
「いまは亡き」と訳されています。

これはびっくり。

そして車教授による解釈、
これにもびっくり。

シャーロキアンの間では
知られた話なのだろうか?

その「いまはなき」をめぐって
物語を組み立てているのは、お見事でした。


ちなみに第25話「幻の聖典」に出てくる
柴田錬三郎訳のホームズ本は有名なので
(少なくともマニアの間では有名なのでw)
自分も持ってます。
だから、少年の疑問の答も
今回に限ってはすぐに分かりました。
ズルですけどね(藁

まんがの中に出てくる本の装幀(p.130)は
自分が持ってる1980年に出た重版本↓

$圏外の日乘-柴田錬三郎訳『名探偵ホームズ』
(偕成社、1980年 重版)

とは違いますが、
もともとの1956(昭和31)年に刊行された
初版の装幀とも異なりますので、
池田邦彦が持っているのは
そういう版なのでしょう。

題名もいちばん簡略なバージョンだし。
(初版と、池田のまんがに出てくる版は
 『名探偵ホームズの冒険』という題です)

児童書ではよくあることです(苦笑)

ちなみに、手許の本には
奥付に発行年月表記はありません。
これも児童書では、よくあることです。


昭和31年版の装幀は、今なら
森英俊・野村宏平編著
『少年少女 昭和ミステリ美術館
 表紙でみるジュニア・ミステリの世界』

$圏外の日乘-『少年少女 昭和ミステリ美術館』
(平凡社、2011年10月20日発行)

で確認することができます(p.27)。