$圏外の日乘-フォルテピアノ
(コジマ録音・販売 LMCD-1784、2005.3.31)

浜松楽器博物館コレクションシリーズの4巻は
『フォルテピアノ』というタイトルで、
ワルター(ウィーン)、ブロードウッド(イギリス)、
グラーフ(ウィーン)、プレイエル(フランス)、
フリッツ(ウィーン)、シュトライヒャー(ウィーン)と、
都合6台(6社)の
フォルテピアノ(歴史的ピアノ)の演奏が
収められています。

こちらも小倉貴久子の演奏。

現代のコンサート・グランドに至る過渡期だけに、
19世紀のピアノは、製作者(社)によって
1台1台の音色が違っていたといわれます。

この時期の曲が面白いのは、
ピアノに合わせて作曲されていることですね。
ベートーヴェンなんかは、時代によって
音域が広がっていくらしい。
(鍵盤の数がだんだん増えていくのでw)

与えられた楽器の性能を
限界まで引き出そうとする作曲家のノリは、
新しい玩具を与えられた子どもにも似ています。

もちろんスポンサーのため、
楽器製作者へのサジェスチョンのため、
という事情もあるんでしょうけど。

ちょうどバッハが、新しいオルガンの
試し弾きをしたようなものですね。

本CDの2曲目、
ブロードウッドで弾かれた
ハイドンのソナタは、
まだチェンバロに近い感じです。

同じブロードウッドで弾かれている
ベートーヴェンの熱情ソナタ 第1楽章は
ちゃんとピアノの音のように聴こえるんですが。

奥が深い……

先に紹介したDVDに収められていた
ショパンのノクターン 変ホ長調 作品9-2 は
このCDに、プレイエルで演奏されています。

これもCMなどでよく耳にしますねー。

例の、フィールドのノクターンも、プレイエルで1曲。
(前に紹介したCDの収録曲とは別の曲です)

その他、シューベルト、メンデルスゾーン、
ベートーヴェンなど、おなじみの作曲家ばかり。

ベートーヴェンの超有名曲
「エリーゼのために」も入ってますが、
(シュトライヒャーで演奏されています)
知っている曲は、ほとんどありません。(^^;ゞ

これと、先のショパンくらい……。

あ、メンデルスゾーンの2曲の内、
無言歌からの1曲(「春のうた」)も、
聴いたことあるなあ。

とにかく、ひとえに
それぞれのフォルテピアノの
響きの違いを知りたくて買いました。

かといって、すぐに聴きわけられるはずも
ないのですが……

同じグラーフなのに、
シューベルトとメンデルスゾーンとで、
全然違う音に聞こえるし。

そもそも現代ピアノの音と演奏に、
そこそこ親しんでないと、
現代の音との違いも分からないしね。

それにしても、
プレイエルばかりが、なぜもてるー(苦笑)

各ピアノ、それぞれに1枚が充てられても
いいと思うなあ。

ちなみに非常に印象的な音は、ベートーヴェンの
「創作主題《トルコ行進曲》の主題による6つの変奏曲」で、
最初と最後の演奏に鈴の音(?)が加わります。

これは当時のフリッツが、
ペダル操作でそういう音が出るよう
作られていたからのようです。

ベートーヴェンの楽譜に
そういう指示があったのかどうか知りませんが、
これは聴いていて楽しいですね。

バロック時代のオルガンにも、
クリスマス用の曲で、
演奏中に鈴の音がなるような効果の
ストップ(音栓)がありますので、
まあ、同じような発想といえばいえそうですね。

そういう玩具みたいなピアノは
淘汰されていくわけですが。