必要があって、
パトリック・クェンティンの
『癲狂院(てんきょういん)殺人事件』
A Puzzle for Fools(1936)を
読んでいたところ(もちろん日本語訳で)、
こんな箇所がありました。
彼女のリクエストを入れて、
老人はおとなしく腰をおろし、
バッハのラプソディを弾いた。
それは速度と明るさの点で、
ハッとさせる美しさがあった。(高橋泰邦訳)
バッハのラプソディ???
ラプソディは「狂詩曲」と訳されますが、
自分の知るかぎり、バッハには
ラプソディと呼ばれる曲はないはず。
ラプソディは
近代ピアニズムの産物だと思うのですが……
この作品にはもう一箇所、
バッハへの言及がありました。
彼が出し抜けに曲を切り、
安らかなバッハの合唱曲に移ったとき、
私自身、肌に粟を生じはじめていた。
涼やかな、心を慰める曲調が、
徐々にその緊張をほぐしていった。
『癲狂院殺人事件』は、
精神を病んだ人々を治療するサナトリウムでの
連続殺人(二重殺人)を、
アルコール中毒の治療のために入院していた
演劇プロデューサーが解決しようとする話です。
上に引いたのは、両方とも、
精神を病んだ指揮者が、
ピアノでバッハを弾く場面です。
バッハの合唱曲とあるのは、おそらく
バッハのコラール曲のことでしょう。
コラール choral(英語表記は chorale )というのは、
ルター派キリスト教会の讃美歌で、
もともとは合唱隊を意味するラテン語だそうです。
それが後に合唱隊が唄う歌を指すようになりました。
バッハはコラールに基づいたオルガン曲を
多く作っており、そのオルガン曲は
後世の作曲家・演奏家によって
ピアノ演奏用に編曲されています。
作中の指揮者が弾いたのは、たぶんそれ(の内のどれか)。
でも、最初に引いたラプソディは
原曲が何なのか、想像がつきません(°Д°:)
おそらくはバッハ作曲のなんらかの曲が、
当時「バッハのラプソディ」という通称を
与えられていたのでしょうけれど……。
ちなみに『癲狂院殺人事件』、
犯人の正体、というか能力は、
いささかケレン味がかちすぎる気がしますが、
しっかりだまされました。
それにしてもこの時期(1930年代半ば)、
癲狂院というかサナトリウムというか、
ぶっちゃけ、精神病院を舞台にしたり、
精神科医が探偵役だったりするミステリが
内外問わず多いように感じるのは、
気のせいでしょうかねえ。
なお、今回はこれ↓で読みました。

(1959年11月15日発行 12巻11号 通巻93号、宝石社)
てか、日本語訳は、これでしか読めないんだけどf(^^;
表紙の写真を見て
勘違いする人がいるかもしれないので
いちおう書いておくと、
『別冊宝石』というのは、戦後創刊された
探偵小説専門誌『宝石』の別冊です。
蛇足ながら、『宝石』は、横溝正史の
『本陣殺人事件』や『獄門島』が連載された雑誌です。
自分が生まれる前に出た雑誌です。
(そうなんですよー、と強調w)
昔、古本屋で見つけた時は安かったけど、
今はいくらするんでしょう?(藁
パトリック・クェンティンの
『癲狂院(てんきょういん)殺人事件』
A Puzzle for Fools(1936)を
読んでいたところ(もちろん日本語訳で)、
こんな箇所がありました。
彼女のリクエストを入れて、
老人はおとなしく腰をおろし、
バッハのラプソディを弾いた。
それは速度と明るさの点で、
ハッとさせる美しさがあった。(高橋泰邦訳)
バッハのラプソディ???
ラプソディは「狂詩曲」と訳されますが、
自分の知るかぎり、バッハには
ラプソディと呼ばれる曲はないはず。
ラプソディは
近代ピアニズムの産物だと思うのですが……
この作品にはもう一箇所、
バッハへの言及がありました。
彼が出し抜けに曲を切り、
安らかなバッハの合唱曲に移ったとき、
私自身、肌に粟を生じはじめていた。
涼やかな、心を慰める曲調が、
徐々にその緊張をほぐしていった。
『癲狂院殺人事件』は、
精神を病んだ人々を治療するサナトリウムでの
連続殺人(二重殺人)を、
アルコール中毒の治療のために入院していた
演劇プロデューサーが解決しようとする話です。
上に引いたのは、両方とも、
精神を病んだ指揮者が、
ピアノでバッハを弾く場面です。
バッハの合唱曲とあるのは、おそらく
バッハのコラール曲のことでしょう。
コラール choral(英語表記は chorale )というのは、
ルター派キリスト教会の讃美歌で、
もともとは合唱隊を意味するラテン語だそうです。
それが後に合唱隊が唄う歌を指すようになりました。
バッハはコラールに基づいたオルガン曲を
多く作っており、そのオルガン曲は
後世の作曲家・演奏家によって
ピアノ演奏用に編曲されています。
作中の指揮者が弾いたのは、たぶんそれ(の内のどれか)。
でも、最初に引いたラプソディは
原曲が何なのか、想像がつきません(°Д°:)
おそらくはバッハ作曲のなんらかの曲が、
当時「バッハのラプソディ」という通称を
与えられていたのでしょうけれど……。
ちなみに『癲狂院殺人事件』、
犯人の正体、というか能力は、
いささかケレン味がかちすぎる気がしますが、
しっかりだまされました。
それにしてもこの時期(1930年代半ば)、
癲狂院というかサナトリウムというか、
ぶっちゃけ、精神病院を舞台にしたり、
精神科医が探偵役だったりするミステリが
内外問わず多いように感じるのは、
気のせいでしょうかねえ。
なお、今回はこれ↓で読みました。

(1959年11月15日発行 12巻11号 通巻93号、宝石社)
てか、日本語訳は、これでしか読めないんだけどf(^^;
表紙の写真を見て
勘違いする人がいるかもしれないので
いちおう書いておくと、
『別冊宝石』というのは、戦後創刊された
探偵小説専門誌『宝石』の別冊です。
蛇足ながら、『宝石』は、横溝正史の
『本陣殺人事件』や『獄門島』が連載された雑誌です。
自分が生まれる前に出た雑誌です。
(そうなんですよー、と強調w)
昔、古本屋で見つけた時は安かったけど、
今はいくらするんでしょう?(藁