
(ショパン DVD BOOK 1、2009.11.29)
ショパンというのは、
クラシック音楽関係の本を出している
小出版社なんですが、
こんなものを出していたとは知りませんでした。
今年に入ってから、
Amazon のおすすめで教えられました。
著者の久保田彰は、チェンバロ製作者です。
渡邊順生のCDなんかで名前は知ってましたので、
即買い!
……したかったけど、手許不如意だったので
おすすめされてから、しばらくして買いました(^^;ゞ
買って良かったー!
売れ残っててくれて、ありがとー!!
この本の「あとがき」にもありますが、
チェンバロの歴史や様式を理解させてくれる
一般向けの啓蒙書は少ないんです。
以前、こちらでも紹介した
渡邊順生『チェンバロ・フォルテピアノ』
(東京書籍、2000)は
800ページを超える大冊で、
マニアはともかく、
一般の人には敷居が高すぎるでしょう。
あと、音を出す機構(アクション)なんかは
やっぱり言葉やイラストで説明されても、
直観的に分かりにくい。
その意味では、
『名曲探偵アマデウス』のお正月スペシャル
(だったと思いますが)、
黒川さんが浜松楽器博物館を訪れる回は
なかなか優れものでしたが、
残念ながらピアノが中心の内容でした。
それにさすがに工法までは解説されなかった。
それに『名曲探偵アマデウス』だと
放送を観逃す(録り逃す)と、
繰り返し観られないのが難。
その点、本書は
DVDが附録で付いているのが、
まず、いいですね。
アクションの説明だけでなく、
製作工程の説明もあり、
さらには各時代・各国の様式の説明と、
それに合わせて演奏が入るのがいい。
そのうえ何と!
これは購入してから知ったのですが、
曽根麻矢子の演奏が収められているんです!!
これはもう、曽根フリークとしては
必見必聴なのは、いうまでもありません。
(フリークのくせに、知らなかったわけですが【^^;ゞ)
曽根さんの笑顔の映像があると、
なお良かったのにー(なんか方向が違うw)
曽根さんだけでなく、
チェンバロに発展する楽器
プサルテリウムとダルシマーによる
合奏があったり(カテリーナ古楽合奏団による演奏)、
水永牧子によるヴァージナル(小型チェンバロ)の演奏、
武久源造によるフォルテピアノの演奏の映像も
収められています。
自分はもともと(いつのころからか)
楽器を演奏している奏者の、
手や指の動きを観ることが好きなんです。
変わってますか?
フーガなんて、どう弾いているんだろう
って、気になりません?(藁
だから、こういう鍵盤楽器の演奏を観るの
めちゃくちゃツボを突いてくるですが、
今回観たプサルテリウムやダルシマーは
鍵盤楽器でこそありませんが、
よくあんなの、音のポジションを外さずに
演奏できるよなー。ひたすら感心しました。
それに、これは
ご存知の方もいるかもしれませんが、
武久源造は盲目の鍵盤奏者です。
それを知って観ると、もはや絶句です。
二段鍵盤の上下を行き来する曽根さんの指使い、
感動だよ~
本自体も、綺麗なカラー写真満載で、
それを見ているだけでも楽しい。
映像的には、東京の豊島区にある
重要文化財建築・自由学園「明日館」での
水牧さんがジーンズはいて
スカルラッティのソナタを弾くのが、いい。
演奏している横の窓の外を
普通に人が通っているのが、実にいい感じ。
映像はありませんが、
鍋島元子のチェンバロ演奏や
小倉喜久子のフォルテピアノ演奏も、
部分的に収められています。
これ1冊(と1枚)で
チェンバロの歴史と製造工程と演奏とが
「眼」と「耳」でも楽しめてしまうのです。
自分的には、音色を変えるレジスター操作が
実際に観られたのが何といっても良かった。
バッハのいわゆる平均律の第1巻の
最初のプレリュードからフーガに移るとき、
曽根さんがカプラーを操作する映像は
いろんな意味で感動しました。
あと、ヴァージナルの演奏に関して、
カチャカチャという打鍵音があるのも
味があって良かったんですが
(そういう録音も、CDで聴いたことありますけど)
打鍵音についての解説(言及)もほしかったな。
チェンバロという楽器に関心のある方、
初期のピアノ(クリストーフォリ・ピアノと
ジルバーマン・ピアノ)に関心のある方、
チョーおすすめです!

(オビを外したカバー全体の図)