
(1999/高田惠子訳、創元推理文庫、2010.2.10)
主婦探偵ルーシー・ストーン・シリーズの第5作です。
このシリーズは、第1作
『メールオーダーはできません』を読んだきり。
サブ・ジャンル的には
いわゆるコージー・ミステリというやつで、
謎ときやプロットの目新しさ・奇抜さよりも、
アガサ・クリスティーのミス・マープルが住む
セント・メアリ・ミード村のような田舎を舞台に、
生き生きと描かれた世態風俗で興味をつなぎつつ、
事件の真相が自然にほつれていくのを楽しませる、
といったていの作品です(合ってるかな? w)
だから、ふだんは
あまり手を出さない類の作品なのですが、
本日はバレンタインというのにちなんで、
ちょうど店頭に出たばかりでもあり、
読んでみることにしました。
まあ、上で説明したとおりの、
トリックや推理の面白さが
まったく感じられない話でした(苦笑)
その代わりに、今回の作品は、
図書館司書が殺される話だからなのか、
各章の冒頭に有名な童話・童謡からの一節が、
その章の内容を示唆する
エピグラフとしてあげられています。
たとえば何者かの仕掛けで
火だるまになったオンボロ自家用車の代わりに、
立派なレンタル車を運転することになった章では、
妖精がカボチャを馬車に変える
シンデレラの一節が引用される、といった具合。
新しい章に入るたびに、
今度はどういう趣向(もじり)だろうと
楽しくなりました。
ミステリとしてのプロットは凡庸でも、
小説としての工夫があると、
印象が良くなるものです。
百年に一度の猛吹雪に襲われて、
バレンタイン・ブリザードと名付けられる
といったあたりも面白い。
なんかアメリカ全土で雪害が起きているという
すごいことになってます。
最後の、一種のスペクタクル・シーンは
ゴシック小説でお約束(かな? w)の
お城の崩壊なんかをイメージしましたが、
あるいは作者も狙ってるのかもしれませんね。
そんなこんなで、
読後感は悪くありませんでした。
訳文も読みやすかったです。

さりげなく描かれている
だけでした。
カバーにもあるような
カップケーキを
子どもたちと焼く場面が
あります。
チョコレートを贈る
場面もありますが、
日本でのような
感じでないのは
よく分かりますので、
彼我の違いに
興味がおありの方は
読んでみても
いいかもしれませんね。
ちなみにオビを外すと上のような感じ。
良くも悪くも、作品の雰囲気がよく表われてます。