$圏外の日乘-中野振一郎のゴルトベルク(旧盤)
(デンオン COCQ-83424~5、2000.7.20)

中野振一郎の「J. S. バッハ・アルバム」第3巻。
録音は1999年10月14~17、19~21日。
中野による最初のゴルトベルクの録音です。

この2枚組のCDには、
ピリオド楽器(古楽器)による演奏と
モダン楽器による演奏の、
2種類の録音が収められています。

新譜で出た時、そのうち買おうと思っていたら、
いつの間にか店頭から消えてしまい、
くやしい思いをしたことを覚えています(- -;

ところが先日、仕事の打ち合わせの帰りに
神田のディスク・ユニオンで見つけました。
定価5040円が、中古で1890円(共に税込)。
これは安い!
慌てて買ったことでした。

なぜ、そのうちに、と思っていたかというと、
ピリオド楽器による演奏が
1枚のCDに入りきれていなかったからです。

1枚目には最初のアリアから第24変奏までが収録され、
残りの第25変奏から最後のアリアまでは
2枚目のCDに入っているんですよ。

複数のCDを演奏できるプレーヤーを
持っているわけもなく、
途中で入れ替えるのでは、
興が削がれる気もされたので、
ためらっていたんですね。

ゴルトベルクは、楽譜の指示通りに
ダ・カーポも全て省略せずに演奏したら、
80分ほどかかってしまい、
1枚のCDには収まらないんです
(ダ・カーポを省略したモダンによる演奏は52分)。

曽根麻矢子の新録も、残念ながら
1枚に収めるために、不承不承(だと思いますが)
適宜ダ・カーポを省略しています。

メディアの形態が曲の演奏に影響を及ぼす
良い(悪い)例ですね。

しょうがないんで、
iTunes のプレイリストで
疑似的に1枚のCDにしちゃいました(^^ゞ

中野のCDで使われている楽器は、
ピリオドが、デュルケンが1745年に製作した
2段鍵盤を持つフレーミッシュ・タイプのコピーで、
モダンが、ノイペルト社製のものです。

ノイペルトのは、商品名を
「ヴィヴァルディ」というみたいです(藁

モダンとピリオドを同じ人間が演奏して、
それを一緒に発売するというCDは唯一無二。
このアルバムを買うだけで、
両方の音色の違いが分かるわけですね。

そして、ピリオド楽器の音色がいかに美しいかも、
一目瞭然ならぬ、一「耳」瞭然なわけです。

もっとも、なぜかライナーに寄稿している
作家の石田衣良(!)は
「好きでよくプレーヤーにかけるようになるのは、
 きっとモダンのほうだと思う」
と書いてますけど。

モダン楽器の演奏は、
機械的に音色を変えて演奏されているので、
音の表情は多彩ですが、
音色の多彩さで響き(残響音)の貧弱さを
誤魔化している気がしないでもないんですよ。

だから自分の場合、
好きでよく iTunes で聴くようになるのは
絶対ピリオドのほうだと思います。