副題「佐藤誠はなぜ首を切断したのか?」
作者名は「よみさか・ゆうじ」と読みます。

(光文社、2008年7月25日発行)
去年の新刊ですが、
ちょっと必要があって読みました。
今ごろ(^^;ゞ
でも、遅ればせでも、読んで良かったです。
佐藤誠という大量殺人犯が起こした
事件のひとつ、遠海市の重殺人事件の
経緯・顛末を描いた作品です。
最初から犯人は佐藤誠だと明かされています。
ミステリとしてのポイントは、
長い副題にもあるように、
なぜ2人の被害者の首を切断したのか、です。
その謎は、
思想信条などの表明であるとか、
犯人が異常者だったから、とか
いうふうにではなく、
本格ミステリらしく、
本文中の伏線を拾いながら、
合理的に解かれていきます。
首を切断する理由自体は、
先例がありそうな気もしますが、
状況とキャラによって、
新しい印象を与えるものになっています。
アリバイ・トリックも出てくるんですが、
その使い方も、巧かったですね。
小説の書き方(スタイル)も含め、
謎とき以外の部分の趣向やセンスが面白く、
それもあって、
あっという間に読み終えました。
登場人物では、
佐藤誠がよく描けているのは、当然ながら、
進路に悩む女子中学生のキャラが
なかなか良い。こういうの好みです。
本全体の構成としては、
詠坂雄二とは別の人物による
「まえがき・あとがき」の他、
小説風部分の各章の最後に、
エッセイ風の解説がついていて、
全体が〈遠海事件〉研究本
という体裁になっています。
エッセイ部分の執筆者の名前は
「あとがき」で明かされますが、
最初、おやっと思わせられました。
それに絡めるかたちで
巻末資料の
遠海事件関連年譜が利用されていて、
この趣向は面白かったです。
おそらく「作者あとがき」なんかを
先に読んでしまう読者を想定しての
仕掛けというか、
そういう読者の楽しみを奪わないための
工夫なんでしょう。
巻末広告を使ったお遊びも面白い。
あと、作中で、ある人物の口を借りて
本格ミステリ論めいたことが語られるのも
なかなか面白かったです。
デビュー作の『リロ・グラ・シスタ』(2007)は
あまり感心しなかったのですが、
第2作目にして、
こういう趣向づくしの小説をものして、
当方のツボを突いてくるとは、
思ってもみませんでした。
嬉しい驚きです。
装幀も、きれいですね。

オビを外すと、こうなります。

(装幀:坂野公一(well design)/装画:七戸 優)
作者名は「よみさか・ゆうじ」と読みます。

(光文社、2008年7月25日発行)
去年の新刊ですが、
ちょっと必要があって読みました。
今ごろ(^^;ゞ
でも、遅ればせでも、読んで良かったです。
佐藤誠という大量殺人犯が起こした
事件のひとつ、遠海市の重殺人事件の
経緯・顛末を描いた作品です。
最初から犯人は佐藤誠だと明かされています。
ミステリとしてのポイントは、
長い副題にもあるように、
なぜ2人の被害者の首を切断したのか、です。
その謎は、
思想信条などの表明であるとか、
犯人が異常者だったから、とか
いうふうにではなく、
本格ミステリらしく、
本文中の伏線を拾いながら、
合理的に解かれていきます。
首を切断する理由自体は、
先例がありそうな気もしますが、
状況とキャラによって、
新しい印象を与えるものになっています。
アリバイ・トリックも出てくるんですが、
その使い方も、巧かったですね。
小説の書き方(スタイル)も含め、
謎とき以外の部分の趣向やセンスが面白く、
それもあって、
あっという間に読み終えました。
登場人物では、
佐藤誠がよく描けているのは、当然ながら、
進路に悩む女子中学生のキャラが
なかなか良い。こういうの好みです。
本全体の構成としては、
詠坂雄二とは別の人物による
「まえがき・あとがき」の他、
小説風部分の各章の最後に、
エッセイ風の解説がついていて、
全体が〈遠海事件〉研究本
という体裁になっています。
エッセイ部分の執筆者の名前は
「あとがき」で明かされますが、
最初、おやっと思わせられました。
それに絡めるかたちで
巻末資料の
遠海事件関連年譜が利用されていて、
この趣向は面白かったです。
おそらく「作者あとがき」なんかを
先に読んでしまう読者を想定しての
仕掛けというか、
そういう読者の楽しみを奪わないための
工夫なんでしょう。
巻末広告を使ったお遊びも面白い。
あと、作中で、ある人物の口を借りて
本格ミステリ論めいたことが語られるのも
なかなか面白かったです。
デビュー作の『リロ・グラ・シスタ』(2007)は
あまり感心しなかったのですが、
第2作目にして、
こういう趣向づくしの小説をものして、
当方のツボを突いてくるとは、
思ってもみませんでした。
嬉しい驚きです。
装幀も、きれいですね。

オビを外すと、こうなります。

(装幀:坂野公一(well design)/装画:七戸 優)