$圏外の日乘-翻訳唱歌集『故郷を離るる歌』
(日本コロムビア COCO-80861、1998.7.18)

『故郷』の次に買ったCDが
これではないかと思います。

明治時代、音楽教育のために
唱歌が編まれるわけですが、
初期は、外国の有名な曲に
日本語を当てはめた曲が
いっぱいありました。
そういうのを翻訳唱歌といいます。

歌詞は、原詞の和訳
というわけではありませんで、
勝手に日本語の歌詞を当てはめた
いわゆる替え歌もいくらもあります。

だから、原曲が外国曲だとは知らずに
日本のうたとして歌っているものが
いくらもあるわけですが、
このCDには原曲が外国のものだけ
収められています。

このCDを『故郷』の次に買ったのは、たぶん
チェンバリストの中野振一郎が
伴奏を担当しているからですね。
古楽ファン、特にチェンバロ・ファンの
血が騒ぎますよ、やっぱり。

中には、J・S・バッハの五男
(音楽史に名を残している中では三男)
ヨハン・クリストフ・フリードリヒ・バッハ
による《きらきら星変奏曲》も収められてます。

まあ、そんなことは抜きにしても
(なかなかチャーミングな曲なんですがね)、
「むすんで ひらいて」の原曲版から始まって、
近年(2002年)、平井堅がカヴァーしたことで
改めて有名になった「大きな古時計」まで、
小中学校の音楽の時間やCMなど、
どこかで一度は聴いたことのあるような名曲が
24曲、入っています(上記変奏曲を除く)。

チェンバロの伴奏が、これまた絶妙でして。

オルガンなどによる伴奏だと、
詞が音につぶされるという判断から
チェンバロが採用されたもののようですが、
前にも書いた通り、
基本的に唱歌は無伴奏なので、
だからここでのチェンバロ伴奏も
原曲の背景に合わせた即興演奏です。
そういう伴奏に、
藍川由美の明晰な発声が合わさると、
歌詞がはっきり聴き取れて、実にいい。

おまけに録音もいい(おそらく)。
残響が歌の魅力をうまく引き立てています。

実をいえば、先に紹介した『故郷』より
こちらのCDの方が、全体として
個人的には好きです。

最近の学校の音楽の時間は
何を教えているのか分かりませんが、
そうですね、少なくとも現在40代以上の人には、
懐かしい歌、満載なんではないでしょうか。

これを聴いて、
むかし習った(聴いた)歌はこれだったか~
と記憶を新たにしましたよ。

「トロイカ」とか
「ポーリュシュカ・ポーレ」まで
入ってるんですよ~。懐かし~(感涙)

とにかく、これはいいです、名盤!
(でも残念ながら、現在品切のよう【T_T】)