先日、ヲ仲間のKさんに
『静かなるドン 新章』VOL.2で、
奈央ちゃん演ずる理江が
ぼろぼろになった状態で歌っていた

♪待てど 暮らせど 来ぬ人を

という曲は何だっけ、と聞かれたのですが、
これは、一定程度の年齢の方なら、よくご存知の
「宵待草(よいまちぐさ)」という曲です。

作詞は竹久夢二、作曲は多 忠亮(おおの ただすけ)。
例によって Wikipedia を参照したところ、
最初、夢二の第1詩集『どんたく』(1913)に収められ、
その4年後にヴァイオリニストの多が曲を付け、
芸術座の音楽会で発表されたとのことです。
そして翌1918(大正7)年に
夢二の絵を表紙にあしらった楽譜が出版されて、
たちまち人気が出ました。

その人気にあやかって作られた
映画『宵待草』(1938)では、
西條八十が第2番の歌詞を補筆していますが、
ほとんど歌われることはないそうです。

手持ちのCDをあさってみたら、
クラシックの奏者が歌っているのが
何枚かありました。
確かにみんな、
夢二の歌詞しか歌っていませんね。

最初に録音したのが誰かは知りませんが、
ウチにあるのでいちばん古いのが、
往年のプリマ・ドンナ関屋敏子が
1935(昭和10)年に吹込んで、
ビクターから発売したものでした。
下の写真は、それを収めたCD
『夜の調べ●関屋敏子イン・デジタル』です。

$圏外の日乘-夜の調べ●関屋敏子イン・デジタル
(ビクター音楽産業 VDC-538、1984)

古い日本のうたの録音に関心があって、
買ったものですが、
中古で入手したので、タスキはありません。

ちょっと発音が今と違う感じですし、
第2番(1番の繰返し)は
ベルカント風(?)に歌われているので、
資料的価値以外の魅力を感じられず、
あまりお勧めできないのが残念。

新しい録音では、鮫島有美子のベストセラー
『日本のうた』の吹込が
よく知られているかもしれません。

$圏外の日乘-日本のうた(鮫島有美子)
(日本コロムビア COCO-6806、1990.10.21)

ただ、この曲に限っていえば、
ピアノとピアニシモの強弱が対照的すぎるためか
(原譜通りなのかもしれませんが)、
歌詞が聴き取りにくい感じがして、
あまりいいとは思えません。

その他、米良美一も吹込んでいるようですが、
残念ながら聴いたことはありません。

結局、映画の主題歌になった時に
高峰三枝子が歌ったものが、
いちばんしっくりきたりします。
それが収められているのが下のCD
『SP盤復刻による日本映画主題歌集3
 戦前編 1938~39』です。

$圏外の日乘-日本映画主題歌集3
(日本コロムビア COCA-12853、1995.9.30)

これは、古い日本のうたへの関心というより
(それもありますが)、
映画『愛染(あいぜん)かつら』の主題歌を
オリジナル録音で聴きたくて買ったものです。

『宵待草』が映画になっていることを知って、
もしかしたら、と思って探し出してみると、
トップに『宵待草』の高峰版が入っていました。
もちろん、西條八十の補作分も歌われています。

死蔵を恐れず買っておくと、
いつかは役に立つものですなあ(しみじみ)