
(2008/対馬 妙訳、ランダムハウス講談社文庫、2008.9.10)
ちょうど一年くらい前に刊行された本ですが、
買ったまま、読む機会を逸しておりました。
シリーズの第2作が出たということで、
いい機会なので、
読んでおくことにしました。
舞台は、1483年、イタリアのミラノ公国。
レオナルド・ダ・ヴィンチが仕える
ミラノ公爵の弟である伯爵が、
人間を駒に使ったチェスの試合中、
何者かに殺害されます。
レオナルドは、ミラノ公の命を受け、
死体を発見した弟子のディノと共に
事件の捜査に当たるというお話。
レオナルドはルネサンス時代の万能人で、
論理的な思考能力に長けていましたから、
名探偵の役回りとしてはぴったりなのです。
でも、論理的な推理で犯人を絞り込むというより、
さまざまな仕掛けで情報を収集したり、
罠を仕掛けたりという方法で犯人を突き止めるので、
捜査の面白さはあっても、
推理の面白さはあまり感じられません。
ただ、語り手の設定が巧みで、
キャラクターの魅力が
物語の魅力につながっていて、
この語り手がピンチにあったりするので、
お話自体は楽しめるものになっています。
訳者あとがきでは、その趣向を
いちおう伏せているのに、
本のオビで匂わせているのは、
ちょっと残念でした
(勘のいい読者なら、
40ページほど読めば分かるとはいえ)。
レオナルドが犯人に罠をかける際、
ある仕掛けをほどこすのですが、
その仕掛けが動き出す場面は、
まんがみたいで、ややウケたことでした。
映像化したら、面白いでしょう。
驚天動地の大トリックや、
目の覚めるようなあざやかな推理
とは無縁ですが、
上品で嫌味のない作風には
好感が持てました。
装幀(装画)も、
落ち着いた感じで、きれいですね。
これで邦題がオシャレであれば、
いうことなかったのですが……
原題は The Queen's Gambit です。