舞台『ムーラン・ドゥ・ラ・ギャレット』で
印象的だったのは、
下手にアンサンブルの席が用意されていて、
劇中使用曲が生で演奏されることと、
使用されている曲が、クラシックを
アレンジしたものだったこと、
また一部の曲に歌詞が乗せられて
歌われていたことです。

そのアレンジ曲が収められているのが
以下のCD『200年後の運命』です。

圏外の日乘-200年後の運命
(COMPOZILA CJC-3010、2009.2.25)

クラシック好きの性(さが)で、
というか、バッハの《小フーガ》と
《G線上のアリア》が使われていて、
気になったので、我慢できずに購入しましたf(^_^;

演奏している asianTrinity(アジアントリニティ)は
ヴァイオリン、ヴィオラ、ピアノのアンサンブルで、
奏者は田村茉莉・莉紗・茉麻という三姉妹です。

ただ、ヴァイオリンの田村茉麻は
惜しくも昨年暮に亡くなっています
(CDのタスキに「茉麻に捧ぐ」とあるのは
 そういう事情です、おそらく)。

ですので、舞台でのヴァイオリン演奏は
竹之内悠という方がサポートしています。

『200年後の運命』というタイトルは、
ベートーヴェンの交響曲 第5番《運命》の初演から
200年後の2008年に、
新しいアレンジで演奏したということに
由来するもののようです。

劇中では、その《運命》や
グノーの《アヴェ・マリア》、
ショパンの《別れの曲》などに
歌詞を充てて歌っていました。

《運命》の歌を聴いた時、
嘉門達夫を連想しちゃったのは
ナイショです(^.^;ゞ

グノーの《アヴェ・マリア》は、
もともとバッハの
《平均律クラヴィーア曲集》第1巻
第1曲のプレリュードに、
グノーがオリジナルの旋律を乗せたものなので、
実はこれもバッハ絡みなのです。

バッハは19世紀、
ロマン派の音楽家たちに「再発見」されて、
さまざまにアレンジされましたので、
『ムーラン』の同時代音楽といえなくもないのです。

《G線上のアリア》は、
もともと管弦楽組曲 第3番の第2楽章ですが、
19世紀後半にヴァイオリン用に編曲されて、
そう呼ばれるようになったんですしね。

CDにはその他、劇中使用曲が何曲か入っていますが、
パーカッションやシンセが入った演奏より、
ヴァイオリン、ヴィオラ、ピアノのみでの演奏の方が
個人的には好みです。

劇中で使われているのは
ベートーヴェンやバッハ、
パッヘルベルのカノンを除けば、
後期ロマン派に相当するものが多く、
まさに『ムーラン・トゥ・ラ・ギャレット』と
同時代の音楽が使われているわけです。

CDには入っていませんが、
確か《地獄のオルフェ(天国と地獄)》からの曲が
劇中で使われていたと記憶するオッフェンバックも、
音楽的にはともかく、時期的には後期ロマン派です。

やっぱりCDに入ってないショパンは
前期ロマン派にあたりますが、
19世紀のフランスではサロン音楽として
たいへん親しまれていたそうなので、
時期的に『ムーラン』と同時代といえそうです。

劇自体は画家と踊り子が中心ですが、
クラシック好きには
ドラマを彩る音楽も楽しめるよう
出来ているというわけです。

まあ、ミュージカルですからね、当然か。

以上、千秋楽鑑賞に向けて
予復習も兼ねてのウンチクでした(藁