圏外の日乘-迷惑なんだけど?
(田村義進訳、文春文庫、2009年7月10日発行)

カール・ハイアセンはいちおう
アメリカのミステリ作家、ないしは
犯罪小説作家ということになってますが、
今回の話は、もはやミステリというより、
スラップスティックなユーモア小説
という感じでした。

息子との夕食中、かかってきた
電話セールスの物言いに腹が立った
シングル・マザーのハニーは、
セールスマンを騙して
地元フロリダにある孤島におびき寄せ、
その性根を叩き直すべく
説教してやろうと決意する。

おびき寄せられるセールスマンが、
愛人とのセックスのことしか頭にない
色男気取りの軟弱野郎。
ハニーの仕掛けた罠にかかり、
愛人を連れてフロリダまでやってくる。

その他に、
そのセールスマンの妻が、
浮気の証拠を集めるために雇った私立探偵。

観光案内中に、客の白人が心臓麻痺で死に、
後難を恐れて逃走中の
白人とハーフのインディアン青年。

青年が逃走中に遭遇した
ヒッピー風の女子大生。

さらには、
ハニーをストーカーする
地元の魚屋の変態オヤジ。

その変態から元妻を守ろうとする
麻薬密輸に関わっている元夫と
二人の間の息子も絡んで、
てんやわんやの大騒動になるというお話。

カメレオンやらワニやら、
フロリダの野生動物たちも
物語に興趣を添えています。

内容紹介に目を通すと、
ハニーはまともな感じがしてたんだけど、
中身を読んでみると、ぜんぜんまともじゃない。
「正義」のために暴走する気味があって、
ときどき幻聴で、
ロックンロールやヒップポップが
ステレオで流れるというんだから。

とにかく、これだけ
奇人・変人がオンパレードの小説も珍しい。

こんなにアホばっかで大丈夫なのか、
あの国は、という読後感です(藁

フィクションではあるんだけど、
あの国ならこんな奴、いくらでもいそう、
と思えちゃうんだよね~(苦笑)